ノット、ステップ、ジャンプ

 馬は壇渓を飛ぶのか、跳ぶのか。俺ははじめ「飛ぶ」と書き、あとから気になって「跳ぶ」に変えた。しかし、それでも違和感が残ったので、ひらがなにした。俺はこれを後ろ向きの判断とは思わない。日本語の「とぶ」は「とぶ」であって、「飛」や「跳」で割り切れるものではないからだ。
 しかし、どちらかといえばどちらかでもよさそうだ。一番近いところの教えであるATOKによれば、「飛」は「空中を移動する」、「跳ぶ」は「跳ね上がって何かを越える」とある。天馬のごとく空を飛行するわけではないから、「跳ぶ」で正解か。しかし、例文にも「ハードルを跳ぶ」とある。でも……、そうだ、「飛越」という言葉がある。辞書をひけば、「特に馬術で」などとあるが、俺としては障害レースの言葉だ。各馬飛越していくのだ、大竹柵障害を、水濠障害を。そうだ、どうもあの馬のジャンプは、「跳」というより「飛」のイメージに近い。横移動の感じ。「跳」は縦のイメージ。
 しかし、和人がいくらイメージと言っても、漢字の生まれ故郷の意見も聞きたい。そこで、的盧などで検索すると、そうだ、川を一とびしたのではなく、一度はまったのだった、それで「一躍三丈」などと「躍」まで出てきてわけがわからぬ。面倒なので字典をひいたりはしない。