『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』/監督:三池崇史

 マカロニ・ウエスタンの類は『ワイルドバンチ』を観たような覚えがある。三池崇史の映画は観たことがない。最初に日本語か英語か選べと出てきて、役者が全編英語で演じているという予備知識もなく、吹き替えで観ることになった。見終えたあと、字幕版で軽く見てみたが、どちらが正解かはわからなかった。
 平家の頭領が佐藤浩市で、次に偉いと思しきは堺雅人芹沢鴨と山南さん。佐藤のキャラは初登場時に銃声にびびったりしていてある程度わかるのだけれど、本人のいかつさもあって多少違和感もあったりして、でもヘンリーのあたりとかは様になる。
 対する源氏は伊勢谷友介。これはかっこいいので言うことない。『池袋ウエストゲートパーク』のキングをちょっと思わせるような。たぶん英語もうまいかも。弁慶の変貌とガトリング銃に驚く顔の微妙さもかっこうよさのうちか。弁慶、石橋貴明の弁慶、そして安藤政信の与一はもっと濃くてもよかったか? 松井とイチロー、吹き替えだと松坂と桑田だった。
 桃井かおり。ここのところよく見ている(『太陽』『エロスは甘き香り』)。今回は大立ち回り。全部桃井かおりなんだけど、いやはや。で、これ、かっこよかったね。かなりの部分持っていったね。若い娘時代は……笑っていいのか。
 香川照之。これもこないだ『ゆれる』で見たばかり。二重人格なのかなんなのか、一人芝居は冗長だったが、死にっぷりはよかった。墓碑銘の“Mercedes Zaro”はなんか元ネタがあるよう。マカロニ・ウエスタンは『ワイルドバンチ』一本見たような覚えがあるだけなので知らない。というか、もしこの映画にいろいろな映画へのオマージュが入っていたところで、それをわかるほど映画を知らん。
 木村佳乃木村佳乃については、カードローンのCMの人という以外になんら印象が無かったが、この映画で多少増えた。ちょっと寺島しのぶみたいだと思った。でも、寺島しのぶだったら、もっとエロシーンがえぐかったかもしれないとか思った。
 でも、主人公は伊藤英明で、まあ主人公にありがちな、「結果的な無個性」って感じ。『デスペラード』でも、主人公よりカンパとキーノの方が印象に残る、みたいな。でも、最初に与一のボウガンをはじき返すあたり、絵になる。
 それで、えーと、あとはもう壇ノ浦から数百年後の源平合戦であって、ウエスタンであって、設定の無茶苦茶さの中で思いがけず真面目であって、俺はこれ好き。なんというか、『キル・ビル』観てるような気にもなって、「あれ、これはタランティーノの映画だっけ?」とか錯覚しそうにもなりつつの。たとえば、なんかヤクザ映画とか、『静かなるドン』みてえな、滑稽な死に方の、かえって残酷なところとか(実はちょっと苦手なんだけど、嫌いでもなく)、そういうあたりとか、あと、冒頭の香取慎吾から予告される、過剰な死にっぷりとか、まあ、いや、しかし、いいよ、いいなあ。日本映画だろうと、いや、これがどこ映画なのかなんだかわからんが、やりたいようにやれるぜって感じがしてさ。いいなあ、いいじゃないか、なあ。