『RD 潜脳調査室』最終回

Water is the principle, or the element, of things. All things are water.
-Thales of Miletus

 集合的無意識のような何かを扱ったアニメが多かったのは偶然だろうかなんだろうか、『RD』は水を媒介とすることでそれを説明してみせた。この地球を循環する水こそが万物の源であり、万物を巡り、万物を結びつけるネットワークということだ。さしずめ海は巨大なサーバ。水あるものは、水あって生まれたものは、人間も義体化した人間も、アンドロイドも、ネットの海に生まれた思考体も、みな同根。草木國土悉皆成佛。となるとホロン(全体子)という名づけの意味も明白である。ホロンも私たち人間と変わらない。地球―生命―物質、ホロニクス。
 ここに地球というネットワークを描き出してみせた。企業のネットが星を被い、電子や光が駆け巡り、いくらそのネットの海は広大だわと言ったところで、それすら地球の水のめぐりの似姿にすぎない。攻殻機動隊で電子のネットを描いた士郎正宗が、この地球、自然そのものをサイバーパンクに取り込み、取り込ませた意欲。しかしながら、それは『ドミニオン』などにおいてもちらりと出てきた自然環境への意識というものもあるように思える。いずれにせよ、これぞ新しい地平の開拓、行きつく世界像、むちむちの太もも、すばらしいSFだった。
 ……が、最後まで周恩ボブが忘れられているのが不満。ソウタとホロン。けりはつけてくれたし、ストーリーにハレー彗星を二重の意味で絡ませたのは上手い。波留さんが若返ったのは、まあ逆ウラシマでいいんじゃないか。何とか還元水とも言いますし。それで、波留用義体はあわれゴミ捨て場。久島さんはハレー彗星が来るたびにどっかで実体化するのかしらん。76年後を描いた続編を期待しよう。