- 作者: 飛田範夫
- 出版社/メーカー: 京都大学学術出版会
- 発売日: 2009/08/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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郊外に抱屋敷を持っていても、下町に住まざるをえなかった町人は、自宅に茶庭をつくって一本何十両もするという樹木を植えて、風流を楽しんでいたという。
江戸の下町でよい庭をつくるには、山の手の赤土を土屋から入れさせるのである[略]地面に苔をつけるには下町の焼土では、深山、また幽谷の風趣を求めることは出来ない。植木のためにもよくない、そこで赤土の価がよい。
いくども火事で焼けた江戸の町の土は瓦礫が混ざっているので、コケにも樹木にもよくなかった。そこでコケがよくつく赤土を望んだということらしいが、値段が高かった。それに目をつけたのが朝散大夫藤木氏の末裔の「チンコッきりおじさん」という奇妙な名の人物だった。この藤木には他に兄弟が二人いたが、三人とも幕末旗本のならず者の見本と言われていたらしい。
引用の引用は長谷川時雨『旧聞日本橋』。
で、この三人は自邸の土を父親に内緒で売ろうと、床下を掘った(庭だとばれるから)んだと。
この兄弟は天罰が下ったようで、まともな死に方はしなかったらしい。
……って、「チンコッきりおじさん」てなによ? 「奇妙な名の人物だった」って、名前かよ、「チンコッきりおじさん」! チンコッっきり!
というわけでおれはチンコッきり熱に浮かされググった。
藤木氏がチンコッきりをしていたのもその近所だった
その翌日あたしは、藤木さんのチンコッきりを立って見ていてはいけないと誡められた。そのついでに母と誰かが話していたのだが、チンコッきりおじさんは、職人としても好くないのだそうだ
小態な寮の寮番のような事をしながら、相変らずチンコッきりと煙草の葉選りの内職だった
江戸時代にはチンコッきりおじさんの村があったのか! おじさん、職人としてよくないのか! 大丈夫か! という勢いじゃないか。で、結局チンコっきりってなんよ?
賃粉切り(ちんこきり)とは、賃金を取って葉たばこを刻む職人のことである。単に賃粉ともいう。賃金を取って葉たばこを刻むこと自体も賃粉切りという。
たばこを刻む仕事はあまり元手を必要としなかったことから、経済力を問題とせず始めやすい仕事だったようで、食い詰めた下級武士や浪人が賃粉切りを行うこともあったとされる。
フムン。奇妙な名の人物というのもちょっと変な書き方じゃあないですか。しかし、股間に吹いていた薄ら寒い風はなくなったといえる。
しかし、人間、現代だろうと江戸だろうと変わらないもので。
「賃粉」の読みは、陰茎の幼児語である「ちんこ」と同じである。そのため、すでに誹風柳多留などにも、この同音異義語に絡めた、
・ちんこ切りなら怖いよと頑是なさ
・きん玉の休む隙無き賃粉切り
・煙草屋の娘ちんこが取りたがり
・烟草やの娘ちんこを入たがり
などの川柳が残され、現代にまで伝わっている。
だとさ。人類、馬鹿だろ。
というわけで、おれは『江戸の庭園』について学ぶつもりだったのが、ちんこきりが脳内の9割を占めて終わったという次第。というか、長谷川時雨の「チンコッきり」でも庶民の庭園風景が描かれているからいいや。奥深いな、江戸。まあ、正直あんまり興味ないんだけど。ちょきちょき。