驚きなのは東京の高速道路が木製だったこと。
ほとんど神奈川から、いや、横浜市中区から出ないおれにとって、世界は驚異に満ち満ちている。驚異は同時に脅威なので、おれは横浜市中区から出ないといっていい。東京都などおそろしくて、府中競馬場と大井競馬場くらいにしか行けないといっていい。
しかしまあ、展覧会などに行くこともある。
もっともおれは東京駅と新宿駅と飯田橋駅の位置関係もなにもわからない。東京の地理にはまったく暗い。自転車に乗っていたころ、第二京浜を北上していくと銀座というあたりに出て、少し東に行って江戸川沿いを北上するとあっという間に埼玉に入るということを知ったくらいのものである。
飯田橋の近くに小石川後楽園があるということもはじめて知った。
入園は4時半までで、5時閉園のところ、4時ごろに入園した。都会の中の緑の風情や歴史の情緒を楽しむ暇もない。トレッキングのスピードで園内を回る。
なにをしているのだ。しかし、園内の各所では「市民の森か?」というように大木、緑に囲まれて外を感じさせない。庭園技術かなにか知らないがたいしたものだ。
とはいえ、ときおり放送入ってきて現実に引き戻される。ひとつは5時閉園を予告するもの。
もうひとつは外からのアナウンス。曰く、「場内での撮影、録音は禁止されておりますので、手荷物を……」。
なんの話かね?
はい、東京ドームでジャニーズのコンサート。……と、書いてみたが、なんとおれは生まれて初めて生の東京ドームを見たのである。「これが東京ドームか」と思った。思ってたより周囲から埋没しているような印象だった。巨大な芋虫のようであった。しかしそれが東京ドームなのだから文句も言えまい。「これが東京ドームか」。毎日のように目にしている横浜スタジアムの方が大きく見えるじゃないか。さすが巨大都市東京、おそろしい、おそろしい。
ジェットコースター、おそろしい、おそろしい。
なんか子供が吊るされている。やはり東京はおそろしい、おそろしい……。