夏の暑さが嫌なのは、汗をかくから(個人の感想)

 

八月の終わりに台風が近づいてきたかと思ったら、関東地方に来るまえに消えてしまった。それでもたくさんの雨が降って、神奈川県でも西の方はひどいことになった。八月の終わりの土日のことだった。

 

月曜日。台風の来ていない台風一過。晴れていた。自転車は会社にある。歩いていかなければならない。歩いていくためのTシャツを着て、着替えをバッグにつめて、おれは歩き出した。日傘もさした。九月に日傘がいるのだろうか? カレンダーが一枚めくられただけだ。まだ暑い……。

 

まだ暑い……といっても、真夏のピークは去っている。少しだけそんな感じがする。いつでも季節には敏感でいたい。会社についた。汗をかいている。真夏のピークのころほど汗をかいているわけではない。でも、しばらく汗が引くのを待って、おれは着替えた。着替えながら思った。

 

「酷暑が嫌なのは、汗をかくからでは? 汗さえかかなければ、暑くてもいいのでは?」

 

おれは汗を多めにかくタイプだ。かかない人ときたら、暑い暑いいいながらも見た目は涼し気だ。あれはうらやましい。汗はやっかいだ。不愉快だ。目に入ると泣けてくる。汗がなんのために流れているかは知っているが、それにしてもこいつは嫌いだ。一日に何回もシャワーを浴びたい。というか朝晩浴びている。

 

というわけで、外で働くでもない、肉体労働でもない、地球環境の未来を心配するでもないおれにとって、地球沸騰の時代は「汗が出るから嫌い」というところに落ち着く。汗さえかかなければ、いくら暑くなってもいい。

 

……いや、本当にいいんか? 暑いのって……。たとえば、暑いと寝苦しいというか眠れない。二年くらい前から、一晩中エアコンつけっぱなしにしているが、電気代というものもあるし、エアコンも使えばいずれ壊れる。エアコンなしでは眠れない。おれには金がない。

 

暑さとは関係ないかもしれないが、日焼けもする。おれの肌は年齢のわりにつるつるなことで有名だが、そのうえ色も白い。これが日焼けすると真っ赤になる。日焼けは火傷だというが、火傷だ。健康的な色にもならない。今どき日焼けが健康といえるのかしらないが。だから、サイクリングなどしていたころは、日焼け止めが欠かせなかった。着るのももちろん長袖だ。日焼けは体力を奪う。それにしても、汗が日焼け止めを流す。汗をふくと日焼け止めも落ちる。やはり汗がいけない。

 

しかし、ここまで内容もなく、べつにおもしろい表現方法を使うでもなく、おれはなにをいいたいんだろう? 二十文字以内に要約してほしい。AIに要約してほしい。

「汗をかくことの不快感や暑さに対する葛藤」がテーマです。

汗をかくのが嫌で、暑さが辛いという話ですね。

そうか。

 

しかし人間は勝手なもので、冬の寒さのなにが嫌なのか、今想像することができない。たくさん重ね着をすればいいじゃないか。ヒートテックを着ればいいじゃないか。寒さでは汗もかかないし、べつの体液が体から漏れ出すこともない。早く冬にならないものだろうか。二十一世紀にもなって、たかが暑さで人間が濡れるのもおかしな話だろうが。こんなことすら克服できないで、なにが人類の進歩と調和だ。もううんざりだ。なにもかもうんざりだ。早く冬になれ、みんな凍りついて眠り込んでしまえばいい。