おれの偉大さというのはなかなか理解されないものだから

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おれの偉大さというものはなかなか理解されないものだから。おまえみたいなやつは、だいたいそういうことになっているって、せいぜい思ってるがいいさって、みんないうけれど。

それでも、昔は空を行くものがいたんだ。ひとつやふたつじゃない、もっといっぱいだ。空一面、空を行くものたちがいたんだ。街がシアンに転んだ夕方、ふと空を見たらそんなふうに思えた。

アセビの花が咲いているのに、馬がいないっていうのは、なんだか残念な話だろう。きみは子供のころ木登りが得意だったのかな。隣の空き地に大きなスダジイがあったんだ。君は登ることができたかな。君だったら。

ネジ式のピアス、銀色の小さな球体をつまんで、回す。われながらこんな細かいことをよくできると感心する。もっとおおきな球体をビルにぶつけたりするよりは、こっちの方が得意なんだろうって思うけどさ。

女に土産を頼んだら、その土地の名物の菓子というのが、豆に砂糖がまぶしてあってそれが繋がっているものだという。まったく要領をえないので、おれは二番目に有名なやつにしてくれって頼んだ。

たまにものすごく細い文字を大きく使いたいと思うことがある。カクカクっとしてて、スッキリしてるんだ。でも、ユニバーサルデザインとか言うまでもなく、そんなものは屋外じゃ使えませんって奥さん。

一番目の天使がラッパを吹き、二番目の天使が太鼓を叩いた。三番目の天使が見たこともないような楽器を持って壇上に上がろうとするので、四番目の天使が必死になってとめた。五番目の天使は舞台袖でただただ緊張してた。

対面の捨て牌から嫌な雰囲気が漂ってくる。「換気扇、換気扇」とおれが言うと、上家がチーをした。そして配を捨てようとしたら間違って自分の首を河に投げ込んでしまった。これが今の饅頭の語源だという。

外国はどこも危険にあふれている。盗人はおれの財布を狙っているし、いつどこから拳銃の弾が飛んでくるかわかったもんじゃない。たしかにおれの右手はチェーンソーだけど、だからって外務省は渡航を推奨しないだろうよ。

地の底から這い出てきて我等に厄災をもたらそうとしたものだが、どうにも地上の水はうまくない、飲めたもんじゃないと文句ばかり言う。しまいには宿屋の女将に法規で対処されたそうだ。禁錮5ヶ月。

秘宝の在処を指し示す地図だ。老人が言う。今なら5ドルで譲ろうと言う。おれはSuicaで払いたいと要求する。それは無理だと老人。おれはどうしてもSuicaで決済がしたいのだ。そして秘宝をチャージするのだ。

おれはずいぶんと夢ばかり食べているものだから、たいそう太ってしまった。太り過ぎてベッドから降りられないくらいになってしまった。でも、見てみろよ、その痩けた頬、ガリガリの腕、伸びすぎた爪。

カルロスは本を閉じるタイミングを失った。ほとんど致命的ともいえる間違いだった。一度だってそんな失敗をしたことはなかった。かわいそうなカルロス。村では今でも年に一度だけ彼のことをめくって確かめる。

だれにも手の届かない空があって、空の主だけが自由に雲の形を書き換える。だが、だれもが蒸気的になってしまうと、空の主は地に落ち、君のアパートの壁の染みになってしまった。不動産屋になんて言おう?

死んだ少年の人形だけがこの世でただひとつ美しいものなんだ。死んだ少年では冷たさが足りないし、少年の人形だけでは運命に欠ける。美しい少年の死をトリプティクの真ん中に据えた宗教はないのかしらん。

安酒にだって安酒になるまでの錬金術的な過程があるというのに、おまえたちときたら軽蔑の念すらもってそいつを飲み干してしまう。そしておまえたちはおまえたちの錬金術について語ることをやめない。今夜も、また。

終わることのない歌がきこえる。空は白々しく明ける。焚き木の火も消えようとしている。おれは腰を上げる。肌寒い空気の中を一人歩き始める。あるいはその先に川が流れているのかもしれない。その水はとても冷たい。