あの槍槓さえなければ……『哀しき獣』を観る

哀しき獣 ディレクターズ・エディション [Blu-ray]

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 冒頭、中国朝鮮族の住む街の雀荘。点棒なしの取っ払い。主人公の加槓に槍槓の一撃、狂いだす運命。中国の朝鮮族の悲哀。妻は韓国に出稼ぎに出て帰らない。違法入国のためにつみかさなった借金。タクシー・ドライバーは暗殺者としてソウルへ……。
 とかいう内容、複雑に絡み合う思惑、意図、そんなものはもうどうでもよろしい。よくできているのだろうが、どうでもよろしい。この世でこの映画を観た人間が百万遍も繰り返して言ったことかもしれないが、おれも言う、ミョン社長すげえ! 手斧アクション、骨アクション! 全面的にバイオレンス! もう、後半になるとミョン社長の一挙手一投足に笑いがこみ上げてくるレベル。いろいろな悪役あれど、この強さ、執念深さ、それに人望(自分から海に飛び込むシーン!)、なかなか見られるもんじゃあねえよ。いやはや。新春からスカッとするいいものを見させてもらった! いや、終わり方なんかはしっとりしていて、それでいて無常感あり、ノワールですぜ。
 と、もう二年前の作品で、Wikipediaで公式サイトとされているドメインhttp://kanashiki-kemono.com/←クリックしなくていいです)も出会い系サイトに取られてしまっているけど、未見の方であんまり血まみれ苦手でない人は是非、と。以上。