芋煮とエルロイ 深町秋生『探偵は女手ひとつ』

探偵は女手ひとつ

「こだな大雨にさらさって、逆に特別料金もらいたいぐらいだべ。ギャンブルに挑む男が、そだなケチくさいこと言ってると、貧乏神にとりつかれっぞ」

芋煮とエルロイ、エルロイと芋煮。とくに意味はない。そうだろうか? それをつなぐ作家が一人いるじゃないか。深町秋生である。「ペロペロ芋煮っ娘」、あるいはジェイムズ・エルロイという言葉に反応したやつは本書を読んでみるべきである。芋煮にしか興味がないのなら、河原で芋煮会をやるべきだ。芋煮から帰ったら読んでみるべきだ。ちなみにおれは神奈川の人間であって芋煮会がなんたるかを知らぬ。

本書の主人公は探偵である。そして女である。推理小説を読み慣れている人間ならば、タイトルからここまでのことを読み取れる。とはいえ、その女探偵がサクランボの選果、デリヘルの運転手、雪かきばかりしているとわかるだろうか。これは「いなか、の、じけん」なのだろうか。そうだといえばそうである。とはいえ、ここには一本筋の通ったノワールが立ち込めている。

その一本の筋といえば、やはり主人公であり女であり一女の母であり未亡人である椎名留美の筋の通し方にある。これがかっこいい。馬鹿みたいに単純な言葉で言えばそうなる。映画化したらどんな女優がやるのだろうか、などと考えてみても、いまいち思いつかない。そしてその内面もうかがい知れないところがある。経歴もチラホラと警察官だったことが出てくるくらいで、多くは語られない。そして、開店するパチンコ屋の列に代理でならび、スーパーで万引きを見つける。とはいえ、もちろんヤクザやなんかとのしびれるやり取りもあるのでご安心を。

というわけでこの一冊、おすすめです。そんでもってできれば続編、続編というか山形ノワール三部作とかそんなんも期待です(あ、深町作品全部読んだわけじゃないから、何かとそうなってたりして)。以上。

 

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goldhead.hatenablog.com

参考資料にこの著者の本が挙げられていた。うむ。

d.hatena.ne.jp