深町秋生『プロテクションオフィサー 警視庁組対三課・片桐美波』を読む

 

  水上夫妻の頭から摘出された弾丸は7.62ミリ弾。弾芯が鉄だったことから、発射されたのは中国製のトカレフと断定された。かつての共産圏では、鉛は高価だったため、弾芯に鉄を用いていたのだった。

 それがかえって、弾丸に貫通力をもたらす結果となり、安価で手に入るうえに、一部の防弾ベストを貫く恐怖の拳銃として、日本でも名を知られるようになった。

このトカレフ、通称「銀ダラ」によって元暴力団員であり、そこから足を荒い実業家や富裕層として暮らしていた人間が続けて殺されていく。その標的となった一人の男、生き残った一人の男に身辺警護のPO(プロテクションオフィサー)がつく。それが片桐美波という女性であり、その部下たちである。

話の方は、後半の方まで、じりじりとこれというところなく進む。残りページの手触りから、「これでかたをつけられるのか」と思ったりもする。ところが、そのあたりは畳み掛けるようにして畳んでみせる。見事なものである。激闘に続く激闘であった『ショットガン・ロード』などとは異なり、こちらはじわりじわりと話が進んでいく。元親友である女刑事との関係なども描かれつつ、じわり、じわりと。

じわり、じわりの中には、警察の人間による捜査から科学的調査への移り変わりがあり、暴対法によって追い詰められていくヤクザの姿がある。その描かれ方に変な正義感もなければ、アウトロー賛美もない。それでいて、ヒリヒリする現実を描いてみせる、ありそうな現実を描いてみせる、かっこいい女性警察官を描いてみせる、そこが深町秋生なのだなぁ。現実のヤクザがめんたいこの缶詰に激怒して逮捕されようが、渋いヤクザも描いてみせる(もっとも、めんたいこの缶詰に激怒しそうなヤクザも描けるのだが)、そこんところがいいな。

それでもって、本書の登場人物たちも魅力的であり、続編があるならきっと読むだろう。以上。

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