全員死刑、である。どこの全員か。九州のヤクザ家族四人、父、母、兄、弟の全員が死刑判決を受けた。これである。その「弟」の手記が中心となった本である。
この事件がきわめて残酷なのは事実だが、加害者一家のため息をつきたくなるほどの薄っぺらさ。あっという間に犯行がバレてしまう無計画さ。吐気がするほどの軽薄さや弱さについていけないのだ。
「解説 ジャングルの外にいるありふれた凶獣」深町秋生
と、深町先生が嘆いて(?)しまうほど、本当に生と死のドラマもない、薄っぺらい話である。シャブの効果でイケイケになっている感もあるし、ともかく計画性もなんにもねえの。それで4人殺してるの。加害者もいずれ死刑になるので8人死ぬのだけれど、ともかく、「現実の凶悪犯罪は非論理的で、寒々しいほど散文的だ」(深町秋生)ということなのだ。
あ、シャブでは心神喪失にはならないようです。
「覚せい剤中毒については、統合失調症等とは異なり、人格の核心が冒されることがないため、全人格が病的変化とはならず、対人接触も保たれている。このため、幻覚妄想があっても、それに対応すべき意思・理性・感情などの人格的能力が残存しているので、幻覚妄想に動機付けられた犯行を直ちにこれに支配された犯行として責任能力を否定するのは正当ではない、と指摘されている」(『警察官のための最新基本判例80選4――組織犯罪対策』立花書房・江原伸一著)
とのこと。
で、この事件、事件としてもちょっと知ってるけど、映画見てるんだよな、おれ。
ラーメンが獣臭い度三つ、というのがおれの評価だったようだ。ではこの本は、やはり二つか三つだろう。深町先生の言うところの「薄っぺらさ」がすごいのだ。ペラッペラだ。
が、逆に、これほどペラッペラなものが人を殺してしまう、ペラッペラなことで人を殺してしまう。そして、人は殺されてもなかなか死なないので三度殺されたりする。頭を撃ち抜いて自殺しようとしたら、銃弾が頭蓋骨をグルっと回って死にきれなかったりする。その、なんというか、ため息しか出ない感じは味わえる。
まあともかく、ヤクザとは関わらないに限る。あるいは、「子供の人権はどうなる」と言われようが、ヤクザの子とは関わらないほうが安全だ。それはおそらく、そういうものなのだ。いやはや。