コロシントウリが聖書のすいかやメロンなのか問題

寄稿いたしました。

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セネカ先生の『生の短さについて』から、現代社会のわれわれの労働時間が長すぎるのではないか、という話に持っていった。

 

 

しかし、「持っていった」という感じで、セネカ先生は賃労働というものを直接批判したりはしていない。なぜならば、古代ローマにサラリーマンはいなかったので。でも、かわりに商人の金儲けや、貴族の役務について語っている。

 

まあ、そういうわけで、「漫然と生きていて人生って長いと思っているのも短いと思っているのも勘違いだし、長生きしたという人間も、いったいどれだけ真に自分の時間があったか顧みたらたいして生きてねえよ」みたいなことは現代にも通じるものはあると思うが、それすなわち、今われわれにそのまま通用するものでもねえよなとも感じる。

 

人間の知性というか、基本的な思想なんてのは紀元前だか紀元後200年くらいにはもうできあがっていたとかいうし、すげえ昔から生き残っている書物とかには、なにやら人間的に普遍性のあることが書いてあるのは確かだろうが、まあちょこちょこと通用しない部分も出てくる。

 

そのちょこちょこで、上の記事の最後に書いた「コロシントウリ」についてだけど、あれだな、聖書に書いてあった「すいか」ないし「メロン」は「コロシントウリ」でいいのかな? と、ちょっと思ったりした。ちょっといま手元に聖書植物図鑑がないからわからんけど、こんなサイトは確認した。

聖書植物園について | 聖書植物園 Biblical Botanical Garden | 西南学院大学

《口語訳》われわれは思い起すが、エジプトでは、ただで、魚を食べた。きゅうりも、すいかも、にらも、たまねぎも、そして、にんにくも。(民数11:5)

 《新共同訳》エジプトでは魚をただで食べていたし、きゅうりやメロン、葱や玉葱やにんにくが忘れられない。(民数11:5)

 「アバティーアハ」(ヘブライ語)を『聖書』(口語訳)は「すいか」と訳しているが、『聖書 新共同訳』は、これを「メロン」と訳している。スイカの原種とされているが、果実は毒性をもつ。薬用としても利用される。展示植物は聖書の地に自生する原種である。

「メロン」は協会共同訳では「すいか」となった。

……iPhoneの聖書アプリで見ても「メロン」と「すいか」にわかれているのは確認できた。

でも、聖書のそいつは本当にCitrullus colocynthisなんだろうか。なにせ、苦いらしいし、下剤の効果があるという。

 

うーん、ちょっと検索してみる。英語のサイトで「2 Kings 4:38」に出てくるという。

Topical Bible: Colocynths

2 Kings? 列王記らしい。

彼らの一人が野に草を摘みに出て行き、野生のつる草を見つけ、そこから野生のうりを上着いっぱいに集めて帰って来た。彼らはそれが何であるかを知らなかったので、刻んで煮物の鍋に入れ、人々に食べさせようとよそった。だが、その煮物を口にしたとき、人々は叫んで、「神の人よ、鍋には死の毒が入っています」と言った。彼らはそれを食べることができなかった。

列王記下 4:38-40(新共同訳)

むしろ、この「野生のうり」じゃねえのか。

コロシントウリ | 熊本大学薬学部薬用植物園 薬草データベース

峻下(激しい下剤)作用があり,煎じて用いるか水エキス,アルコールエキスを用いる.服用して2~3時間で大量の水様性便が出る.多量に用いると激し腹痛と衰弱が起こり,血便が出る.

じゃあ「民数記」で「マナばかりで何もねえ」って言ってたやつの指す「メロン」ないし「すいか」はなんなんだろう。よくわからん。野生のコロシントウリを栽培品種化して、食べられるようにしたスイカっぽいなにかじゃないかと想像するが、まあ聖書の歴史は長いし、植物学の歴史も長いのだし、ちゃんと情報にあたれば答えはありそうだ。ありそうだ、ということで、終わり。

 

 

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