冷え症の男、指先を切断する

 中学の頃の話である。英語の定期試験に「cutという単語を作って英文を作れ」という問題が出た。俺は「Yakuza cut his finger himself.」と解答した。戻ってきた解答用紙には○がついていたものの、その横に「Terrible!」とコメントが付いていた。
 さて、俺はこのたび十本の指先を切り落とした。とはいっても、もちろん自分の指ではない。フリースの手袋の指先である。なぜか?冷え性対策のためだ。
 まだ暖房をつけるまでに至らぬこの季節、指先を使ってキーボードとマウスにあたっていても、死人の手になる。この手で痴漢などしようものなら、被害者の女性は「やめてください」の「や」の字を言う前に心臓麻痺で死ぬ。アイスハンド・アサシン。
 アサシンはどうでもよろしい。手袋の話だ。それはかつて原付に乗るときのために百円ショップで買ったもので、捨てても構わないもの。それをリサイクルする賢い新妻のアイディア・ライフ。四方を見回しても新妻は見あたらない。
 しかして、その使用感。これがなかなか良好なのだ。ちゃんと温まる。それに、第一関節から先が出ていれば、キータッチにさほどの影響はない。端からどう見られようと、これはいいぞ。しかも、乱暴に先を切断した手袋をしていると、何やらスターリングラードソ連兵のような気さえして、けっこう悪くないぞ、とまで思う。果たして、これがオタの指ぬきグローブを愛用する理由なのか。