サルスベリ

 駅へ行く途中に見事なサルスベリの樹がある。夏の暑くなる前からだったか、さすがに「百日紅」の名の通り、今以てピンク色の可憐な花を咲かせ続けている。色合いからして米国生まれの園芸品種ではなく、原種のサルスベリ(Lagerstroemia indica)であると思うが、なかなかに華美で異国の情緒すらある。それはまあ当然のことで、原産地は中国南部あたり。日本に入ってきたのは鎌倉時代より前だという。
 それにしても日本語とは便利なものだ。つるつる滑る幹を、子どもにもわかりやすいサルスベリの和名で表し、一方漢字では中国語をそのまま用いて「百日紅」、その花期の長さを表すときている(もちろん「猿滑り」と書く場合もあるけれど)。しかしながら、花を咲かすその樹にとっては、己がサルスベリであろうと百日紅であろうとLagerstroemia indicaであろうと、知ったことじゃないのだ。多分。