『シルミド』二度見る

シルミド/SILMIDO [DVD]
 深夜やっていたので、途中からだったけど、ついつい見てしまった。二度目だ。二度見て面白い映画かというと、なんか一回目見たときより面白かった。チュソン! なんというか、一回目見たときは見慣れぬ韓国映画で、しかもテーマがテーマだけに身構えるところがあったからだ。しかし、単純に兵隊ものとして見る(たぶん、時代や国を変えてこの設定使い回しても成り立つだろう)と、モロズッポリ見事な映画としか言いようがない。これ以上ないほどハマリにハマッたオール配役がそれぞれのステロタイプを演じきっていて怖いくらい。ともかく、怖くて、救いようもなくて、それに見入ってしまう。

この映画を一言で評するなら、殺伐とした汚くて耐え難い雰囲気の「低級の暴力映画」というほかない。にも拘らず多数の観客を動員したのは、「国家が社会的弱者を利用したあげく、政治的に邪魔になると抹殺をした」という過去の政権の容認し難い「犯罪」を「実話」として、告発形式をとって、一般受けする構成になっているからであろう。

http://www.modern-korea.net/column/20040726.html

 が、しかし、たとえば韓国の中の保守派などからすると、これは反国家的な自虐史観に基づいた映画ということになってしまう(しかし、「社会的弱者」というが、映画の中の設定ではみな死刑囚級の囚人なんだがな)。わからんでもない。もしも旧日本軍が部隊であれば、「軍人を悪く描きたいだけだ!」という声もどこかから出てくるだろうし、やはり俺も言及するに身構えてしまうところが出てくるかもしらん。さらにいえば、実話ベースというところが価値判断にある程度、俺にも影響しているかもしらん(『ファーゴ』や『松ヶ根乱射事件』くらいだと別だが)。あと、俺が「怖くて、救いようもなくて、それに見入ってしまう」のが「低級の暴力映画」の楽しみ方に他ならないとしたら、あまり外れてはいないのかもしれない。いずれにせよ、「作品は作品として、現実の事件とは切り離して見るべきだ」というわけには、映画が実話ベースをうたってる以上、あるいはそうでなくとも無理であって、また、進んでそうするのも不自然なようにも思えるが、かといってそれだけで断じてもつまらんところだろうか。
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