大分県の大分キヤノン(国東市)と大分キヤノンマテリアル(杵築〈きつき〉市)の減産に伴い約1200人の非正規社員が解雇される問題で、杵築市は失業者を臨時職員として採用することを決め、16日から募集を始めた。
http://www.asahi.com/national/update/1216/SEB200812160005.html
今、問題になっている派遣切り、派遣切られ問題について、こんな取り組みをする自治体が現れた。そんなニュースをやっている。よくやっている。臨時職員として雇うほか、市内の農家などにも、雇用を呼びかけている。テレビのニュースでは、「今はみかんの箱詰めで人がいる」とか、あるいは「長く働いている人に来てほしい。ゆくゆくは独立を目指して欲しい」など、かなり先を見据えた発言まで見られた。はたしてこの取り組みがどこまで効果あるかわからぬが、しかし見捨てておくよりはいいだろう。有情の価値においてだ。
しかし、今朝のとくダネ!で小倉智昭キャスターがポロッと次のようなこと述べた。「杵築市は、大きなキヤノングループと比べたら、本当に小さい規模でしょうに」と。そうだ、お、小倉さん、小倉さん、ああ、小倉さん、たしかにその通りだ、さすがだ、あ、あ、あまたつ〜ッ!
……ふぅ。そういうわけで、派遣会社を通しており、本来その責務は派遣会社にあるようだけれども、天下の大企業が再就職斡旋に協力したら、いくらか世間の風当たりはやわらいだのではないか。
……
…
トゥルルルルル……、トゥルルルルル……、ガチャ。
「あー農家? オレ、オレオレ、キヤノン、キヤノン。キャノンじゃなくてキヤノンだから本物、マジ安心できる。ヤんとこ見てよ。ええと、それでさ、農家、あのさ、雇用、働く人いらない? マジ人手不足でしょ? ね、ね。それでね、いい話があんの、おじいちゃん、今ならね、いるわけよ人材。働きたいって人、ほんとに。でね、今ならね、お得なの。キャンペーン。あのさ、派遣切りって知ってるでしょ、おじいちゃん、派遣切り。NHKのニュースでやってるでしょ、うん、古舘さんも怒ってるでしょ。…
「それでね、おじいちゃん、今ね、派遣で切られたかわいそうな人を雇ってくれると、自治体からね、補助金が出るの。NHKのニュースでやってたでしょ。うん、古舘さんもほめてた。それでね、今ね、人を雇ってくれると、県と国から農家に補助金が出るんだよ。助成金、お金、お金、もらえるの。困ってる人をね、助けてくれてえらいねって。それで、若い人が手に職をつけて、農業の担い手になると、自給率も上がっていいよって、麻生さんも言ってた。マジ。それで、その、マジ派遣雇ってほしいわけ。本当、もう、キヤノンの製造ラインでも、毎日すごいIXYを箱詰めしてた、うん、もぎたてのIXY。ダンボールに詰めてさ。そういう人がいるの、若くて働き者。それで、その人を雇ってくれると、助成金出るの。…
「あ、協力いただける? ありがとうございます。オレ、マジうれしい。うれしくて困る。それではね、大変もうしわけないんだけれども、最初にね、『ちゃんと雇いましたよ、お給料払いましたよ』って、そういう証拠の書類をね、役所の方に提出してもらわないといけないの。うん、そうそうめんどくさいでしょう。ですからね、それはね、このキャノン、あわわ、キヤノンがやりますから。書類の作成はします。でもね、そのためにね、『お給料払いましたよ』っていう証明が必要なの。だからね、そのね、先に、前払いという形になるわけですけれども、税務処理上の問題なんですけれども、その困ってる人にね、一時金のような形で、『契約しましたよ、お給料払いましたよ』という証明のためにね、そちらからお金をね、その人の口座に振り込んでもらわなきゃいけないんですよ。でもね、本当にあとから補助金が出ますから。…
「えーと、ご諒解いただけました? それで金額の方がですね、100ま……、あー違います、ええと、100万円というのは経理上の数字でしてね、実際には10……5万、今なら5万円を振り込んでいただけると、助成金が200万円、200万円もどってくるんですよ、おじいちゃん。それで、畑からEOSを掘り出す名人をね、バーンとお送りしますよ。それではね、口座なんですけれども、まずATMに行ってもらってね、口座名はね、東京都民銀行……ああ、そう、本社は東京だから、ほら石原さんも協力してくれてるんです。それでね、口座番号はね、東京都民銀行楽天支店……
……
…
なんという無情! これはひどい、ひどすぎる。何がひどいって、こんなことしか思いつかない自分の脳。こんなことで捕まるくらいなら、誰かのかつらでもむんずと掴んでひょうと放り投げ、何の罪かわからないまま投獄されたい。誰かって誰の? お、おぐ。
しかし、テレビでアメリカのビッグスリーの社員が、「自動車は世界の産業の中心だ」とか言ってたけど、まあ確かに、この世のすばらしい科学技術と文明を毛細血管の先の先までお届けするのは自動車なのであるけれども、かといって自動車を焼いて喰ったり煮て食ったりはできない。このレベルの文明、発展、豊かさというのが前提であれば、自動車もまた必需品ではあるけれども、いや、今後も必需品は必需品であるのだけれども、やはり規模として過剰というところは否めなかったのではないか。だからみんな、急に買わなくなる。買わないことによって消費者はいきなり死なない。たぶん、デジカメだってそうだろう。そこは物の余剰があり、物をつくるための余剰があり、さらに大きくは人間の余剰があるんじゃねえかとか、そんな気がするんだけれどもどうだろうか。月20万の給料を貰って、実は社会全体は、その労働を作り出すのに月30万のコストをかけている、というような。
そういうわけで、どうもこれからは、皆、本当に食べて血肉になるようなものを作って、それで暮らしていくような、そんな方向でとりあえず考えて、まあ、売れなくても食える、みてえな、あるいは、そんな方向があるんじゃないのかとか、やくたいもない妄想というか。その実、この虚ろ、自らの仕事だって、虚ろな余剰に乗っかっているような、この電子め、そういう感覚。いずれ、ひょっとしたら、そうなのではないかという、変な寸借詐欺かかつら投げで捕まる以外に何か道があるとしたら、そういうことなんではないかという、そういう妄想があって、こうなってしまった。全部社会が悪い。
まあ、以上、こっち(しょうもない僕の脳内)の話なんですけれども、なにか問題がありましたら、どうぞご海容ください。おしまい。
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