マロン湖架空就職面談記


「あなたはなぜここで働くことを望みますか?」
「やっぱり栗の湖って書いて‘マロンこ’っていうところに興味を持ったといいますか、『はい、マロン湖管理事務所です』って電話に出たりすることになりますと、やはり間違って『ロマン湖管理事務所です』と言い間違えてしまうなどという可能性もあるわけでして、人間生まれたからにはそういった緊張感ある仕事をするべきではないかと。ダムは男のロマン湖でありますし、ダムといえばむき出しビーバーですよ。むき出しというのが悪くない。人間、むき出していくべきだ。むき出さないなんて、まったく問題外だ。人間はむき出すべきだし、ダムもたまには決壊した方がいい。ただ、マロン湖が干上がるというのは、あまりよい感じではありませんな、ガハハ」
「あなたはどんなことを経験してきましたか?」
「そうですね、こないだ人が飼い始めたばかりの小動物に、勝手にラヴレンチーという名前をつけました」
「もし前の同僚がここにいたら、あなたについて何を言うでしょうか?」
「いきなり席を立って部屋の片隅でおどったり寝込んだり右翼の街宣車が近くを通るたびに軍歌を一緒に歌い出した挙げ句、いなくなったあとも勝手に『ラバウル小唄』を口ずさむような精神病院通いの人間が、まともにマロン湖で働くことなどできないと断言するんじゃないでしょうか。しかし、そんなことを言うようだったら、金属バットで頭をかち割って、カレーにして煮てやりますよ! しょう油も持ってこさせます。ボディは確実に透明にしなきゃいけないんだ! そうだ、名物マン湖カレーとかどうですかね? カツとかじゃない、クリが入ってるんですよ、ぷっくりクリちゃんが!」
「私がなぜあなたを雇うべきであるか説明してください」
「ああ、あなたはわからない人だ! これだけの言葉を費やしても、わたしのマロン湖へのロマン湖というものが伝わらないのか! わたしほど生まれつきのマロンっ子なんて、母なるロシアの大地をすみずみまで探したところでいるはずがない! マクドナルドのメニュー表から100円マックの品々を探し出すよりむずかしい! 今の日本に求められているのは、第二革命なんですよ、大西郷が果たし得なかった! ウルトラというならそれも結構! ところで、マクドナルドのシェイクは乳児が母親の母乳を吸うのと同じ吸引力で設計されてるって本当なんですかね?」
「あなたの一番の弱点は何ですか?」
「金属バットで頭を殴られると死ぬことです」
「 最後に、あなたは私に何か質問がありますか?」
「人間が働いて飯を食ってクソをして死ぬってのは、結局どういうことなんですかね?」

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