自転車で左折レーンから直進ドーン!『自転車“道交法”BOOK』を読む


 おれもかつては自転車乗りの端くれの端くれだったような気がする。

 クロスバイクの行って来いサイクリングで195km走れば、まあそれなりのものだろう。横浜から出て江戸川サイクリングロードを延々と北上して帰ってきたりしていたんだ。今では考えられない。
 そのクロスバイク、Giant Escape R2はいま、おれの手元にない。おれがCOLNAGO ACEをイギリスから通販で買ったのと同時に、女にあげてしまった。そして、フルカーボンのロードバイクを手に入れたおれは、すっかり自転車に乗らなくなってしまった。なんだって飽きちまうんだ。自転車もカメラも。
 しかしながら、日々の通勤(雨の日を除く)は小径車を使っているし、たまにロードに乗らないわけでもない。自転車乗りの端くれだったような者として、交通行政、道路交通法が気にならないわけじゃあない。公共の道路を走る以上、最低限法的に完全セーフでありたい。ママチャリのルール破りはたしかに酷い。しかし、ロード乗りの信号無視も吐き気がするほど酷い。酷いコケ方して、ビンディングペダルごと足首から下持っていかれればいいのに、と思う。言い過ぎてない。
 つまりはまあ、自転車脳の恐怖でいろいろ言いたいことはあるんだ。

 
 で、こないだ(といってもしばらく前だが)また自転車関係のあれこれがどうこうとなって、一度知識を整理しておこうかと、ムックを一冊買った。

自転車“道交法"BOOK (エイムック 2789)

自転車“道交法"BOOK (エイムック 2789)

 まあ、いい本じゃねえかと思う。基本的に法がどうなっているかの減速をくり返し述べる。その上で、悪法で現実の道路に則していないときどうすべきか? グレーゾーンの挙動をどうするか。
 たとえば、交差点を直進したいのに自転車が走るのは左折レーン。こういうときどうする? 法的にはそのま直進してよし、だが……左折車がどんどん走ってきてたら、おっかなくてやりにくい。これなど、自転車でちょっと遠乗りしはじめたら出会う一番の罠じゃなかろうか。おれはなにか職質を受けたときかなにかに警察官に直接聞いてみたことがあるが、「直進レーンに入ってもいいんですよ」と言われたことがある。どうもそれでもいいらしい。そこがグレー。しかも、そのグレーをするには車線の一番左から真ん中に行かねばならぬ。道路状況、自転車の車種、乗り手の技量によっては危険も大きい。というか普通に怖い。なぁ。
 なぁ。というため息。これが頻発する本でもある。いくら法的な正しさを盾にしようが、自動車重視(クルマ脳と本書では呼んでいる)の道路行政に文句を垂れようが、道路は道路としてそこにあって、自動車がブンブン走ってる。条文をスラスラ述べられるくらい法律をマスターしようが関係ないのだから。
 そこで、やっぱりなにかしらのハックをしなきゃいけなくなる。おれの個人的な方針は「状況判断に迷ったらとりあえず歩道に逃げる」というのが一番だろうか。逃げていったんとまる。とまって、道路状況を見る。これである。とはいえ、ガードレールがあったりなんだりで逃げられるとは限らないのだが……。でも、先の方にでかい交差点がありそう、とか、自転車通行不可の陸橋がありそう、とか、事前に風の気配を感じられるように革命的警戒心を持って運転する。これである。本書にも押して歩けば歩行者だ、と何度も述べられている。間違っちゃいない。
 つーわけで、本書によって(Amazonのレビューによるとタイトルを変えただけの再販といった評価もあるようだが)、なにか新しい知見を得られた、という部分はあまり多くなかった。異論もあるだろうし、おれもよくわからないが、ブレーキは制動力の問題から右をメーンに考えろ、とか、あと、例の開いた傘をぶっさす器具を使って走ってる自転車は軽車両の定義を外れる、とか。そんで、「よし、また遠乗りに行くか」という気にもあまりならなかった(むしろ、悪道路の写真とか見て面倒くさくなった)。けれども、この本も女にあげてしまってひと通り学んで下さい、というのには適している。そういう意味では悪くない本だ。学校の教科書にしたっていいんじゃないのか。おれもひざに矢をなんたら……また丸一日サドルにまたがる日とか来るのかなぁ?