むつかしくてようわかりませんでした 斎藤環『戦闘美少女の精神分析』

 

戦闘美少女の精神分析 (ちくま文庫)

戦闘美少女の精神分析 (ちくま文庫)

 

よくテレビに出ている別の斎藤先生と勘違いしていた斎藤環先生の本である。おれはアニメで第一に好きなものをすばらしい『ストライクウィッチーズ』シリーズと心に決めているので、こんなタイトルの本は手にとって読まねばならんか、という気になったのである。もっとも、本書が出たのは2000年のことであって、まだすばらしい『ストライクウィッチーズ』が世に出る5、6年前のことである。

で、むつかしかったです。いや、おれ、高卒だし、斎藤さん勘違いしてたくらいだし、精神病の当事者だけど、だからといってお薬モグモグしてるだけだし。あと、オタクといっても、深夜アニメ観始めたのは2010年代からだし……。というわけで、現代思想、心理学などに疎い+連綿と続いてきたオタク文化の歴史を体感していない、というダブルパンチで「むつかしかったです」なのである。

たとえば……。

 精神医学用語に「二重見当識」というものがある。これは精神分裂症(原文ママ)の患者などにみられるとされるもので、例えば「自分は東京都知事だ、資産数十兆円だ」といった妄想を語りながら、看護スタッフの指示で病棟の掃除を手伝ったりしているような事態を指している。(中略)これまで見てきたように、おたくはさまざまな虚構コンテクスト間を自在にジャンプし、また受け手の立場から制作する立場にやすやすと入れ替わることができる。つまりおたくは、「二重」ならぬ「多重見当識」を持つと比喩的に言うことができる。(p.46)

あー、そうなの。自分の立場の理解を見当識というの。それが多重だと現実逃避的に見られるような場合もあるの。うーん、そうなの。ようわからん。

あとはなんだね、斎藤環さんの次の定義はネットなんかでたまに見かけるね。

 端的で下世話な表現をするなら、アニメキャラで「抜く」ことが出来るか否か、それがおたく-非おたくの一つの分岐点ではないだろうか。

これである。とはいえ、おたくが「現実に」倒錯者である場合はそんなに多くないという。これも見当識の切り替え、らしい。

それでもって、話は現役おたくの人が書いた文章、海外事情などが続いて、このあたりは読み飛ばして……。

第4章「ヘンリー・ダーガーの奇妙な王国」と来る。ここでダーガーが来る。おれはダーガーが原美術館に来たとき観に行った。

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ずいぶん前の話じゃあないか。それで、本書では上の原美術館で取り除かれていた(らしい……って、さすがにそこまで記憶になかったよ)、殺戮や拷問についても取り上げられている。して、本当に「本当の意味で彼はずっと子供のままだった」のか。生涯を思春期のまま過ごしたのか。あと、直観像資質者(映像記憶能力者)だったという著者の示唆は正しいのか、わかりまへん。

……次に人物の過度の記号化を防ぐために、表情、とりわけ眼および「手」は入念に描き込むこと。これらは人間の諸器官のうち、もっとも「主観的」な位置を占めているからだ。眼と手丹念に描くことは、セリフを書き込むことと同等の価値を持つ。(p.246)

これは漫画の表現について。二つの器官による情報伝達? 石黒先生の言ってたモダリティ? とはちと違うか(だって二次元だもの)。しかし、それによって大きすぎるアニメ絵の眼、小さな口ができたのではないかというと、そうなのだろうか。ちなみにエヴァとか「手」の演技すごいよな、とか。

……おそらくすべてのファリック・ガールは、徹底して空虚な存在なのだ。彼女は、ある日突然、「異世界」に紛れ込み、何の必然性もなしに戦闘能力を与えられる。彼女の戦闘能力は―ナウシカがそうであるように―説明を欠いた自明の前提となっているか、あるいは「唐突に-外から-理由もなく」もたらされる。(中略)だから媒体(メディア)としての彼女が空虚であるのは、むしろ当然のことだ。(中略)ファリック・マザーが「ペニスを持つ女性」なら、ヒステリーとしてのファリック・ガールは「ペニスに同一化した少女」だ。ただし、そのペニスは空洞のペニス、もはやけっして機能することのない、がらんどうのペニスにほかならない。

とか、このあたりが肝なのかもしらんがようわからん。たとえば綾波レイのような存在、いや、存在の空虚さが、逆に物語のエンジンになるみたいな、そういう感じ? して、このあたりで展開されていく西欧と日本の違いだの、「ヒステリー」というものだの、やっぱりようわからん。勉強不足です。非現実のヴィヴィアン・ガールズを選ぶということが、現代の適応なのか、セクシュアリティの戦略なのか……。ま、いいか。以上。

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