人生、ソープ・ボックス・ダービー

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おまえの車にハンドルはついていなかった。お前の車にはアクセルもなければブレーキもなかった。おまえはただ坂道を下るだけで加速され、まえに進むしかなかった。おまえの車にはハンドルがついていない。おまえの車にはアクセルがない。おまえの車にはブレーキもない。

ただ、頭を低くして、風の抵抗を受けないようにして、進めるところまですすうむだけ。ただ、頭を低くして、できるだけはやく、進むだけ。おまえの車にはハンドルがない。アクセルもブレーキもない。横道にそれることも許されず、はやく終えることも許されず、止まることも許されない。

ただ、最初の加速で進むだけ。ただ、頭を低くして抵抗を受けないようにするだけ。おまえは曲がることもはやく走ることも止まることもゆるされない。泣くことも、笑うことも、窓辺で一杯のコーヒーを飲むこともゆるされない。頭を低くして、狭い視界の中、まっすぐ進んで、自分の意思とは関係なく、止まるときまで止まらないこと。