人間たちの世界のおわりに

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いったいおれたちはいつまでマスクしつづけなきゃいけねえんだ。いま、神奈川県にどれだけの新規感染判明者がいるっていうんだ。もう、市中感染の危険性なんてほとんどねえんじゃねえのか。マスクの暑さがそう言い立てる。おれに答えはない。答えが風に吹かれているわけでもない。でもきっとマスクの暑さがなしくずし的に人々からそのマナー中止、やめやめってなっていって、そして秋が来て、冬が来て、おれたちは750ライダーのように走り出して、またトーキョー・アラートが鳴り響くんだ。秋も冬も、夏も待てないでなくなっちまう店も、会社もきっといっぱいあるんだぜ。弱いやつから死んでいく、ってのはトートロジーかな。死んでいくから弱いと呼ばれるのだ。どっちでもいいぜ、まったく。取引先の会社が一つ倒産した。あと、関係ないけどそこそこのお客さんが贈収賄事件でしょっぴかれた。おれは今日も暇だ。昨日も暇だった。こんなものが生きていていいわけがない。人が生きる価値というのは人からお金をもらえてものを食うことが許されてはじめて生まれるものであって、おれみたいなのをなんていうんだ、穀潰しだ。ほんとうに穀潰しだったのはひきこもってたころだけど、ここ二十年くらいは一応労働してたんだけどな。どんぐりを拾って暮らしていたころはよかったな。まあ、新型コロナウイルス様が啓示してくださったところによれば、おれは用のない人間だということだ。おれだけじゃなく、すごく大勢の人間が、なんとなく社会に余剰、余裕があったから生かしてやっていたけれど、実際のところおまえは不要不急の用なし人間だって宣告されているんだ。なんとも虚しい話だが、いろいろなきれいごとを剥ぎ取ればそういうことになる。本当に人間にとって必要なことをいている人間なんてそんなに多くないんだ。っつーか、そもそも人間にとって必要な人間が存在しなくてはいけないってのはどういうことだよ。公園の散歩から帰るおれの横をポルシェがすごいスピードで駆け抜けていって、急ブレーキするとバックにギアを入れて高級マンションの車庫に消えていった。彼もしくは彼女のための奴隷がいるから、おれがそのタイヤの一つだって買うことのできないポルシェをぶっぱなせるんだ。誰かが誰かのための召し使いでいることはもうやめよう。ずっと昔から、なにもないところを紐で囲んで「これはおれの土地だ」と言い始めたやつ、それを信じちまったまぬけなやつ、その関係を延々と守ってきてできあがってしまったこの世界。そんなものになんの価値があるんだろう。おれも不要だし、あんたも不要だ。貴族も召し使いも不要だ。人間なんか必要ないんだぜ。産めよ増やせよって言った誰かさんがいたってこと、信じてるのか? 気は確かか? だからもうやめよう。人間を増やすのはやめよう。人類は滅んでよい。産まれてきてしまったものは地獄のはらからだから、せめて少し同情してやろう。けれども、まだ影も形もないものに与える同情なんてねえんだよ。もう終わりだ、人間の世界は終わろう。ジューンベリーの枝に飛んできたスズメにこの世界をくれてやろう。おれは神様とかいうやつより寛大なんだ、まったく。

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