いまさらウイルスについて学ぶ 『ウイルスと人間』、『病原体から見た人間』を読む

いまさらながら「ウイルスってなんだろう?」と思った。なので本を読むことにした。わからないことがあれば本を読む。ロックンロール・バンドとウェブサイトは信じちゃいけない。

もっとも、ろくでもないインチキが書かれている本も数多く出版されているのだけれど。

でもまあ、穏当なあたりを選んだつもりだ。

新版 ウイルスと人間 (岩波科学ライブラリー)

新版 ウイルスと人間 (岩波科学ライブラリー)

  • 作者:山内 一也
  • 発売日: 2020/09/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

『新版 ウイルスと人間』は2020年に出版された。ところどころでCOVID-19についての記述がある。とくにすごい情報があるわけでもないが、「なるほど、COVID-19はこういう文脈で語られるね」という感じはあった。

「ウイルスの歴史は長く、人類の歴史は短い」というのがこの本の第一章である。ウイルスの起源は……三つくらい説があって細胞とどちらが先に生まれたかという話らしい。いずれにせよ、哺乳類のなかでもっとも遅く現れた人間に比べたらそうとうに古い。

ウイルスと人間、人間とウイルス。

 天然痘ウイルスは、約3000年前に、アフリカで齧歯類保有するウイルスがヒトに感染して人のウイルスになったものと考えられている。麻疹ウイルスは、ウシの急性伝染病である牛疫ウイルスにヒトが感染した結果、生まれたと考えられている。p.8

現在でも生まれているヒトウイルスへの変異では、たとえばHIVなどがあげられる。もちろん、コウモリだがセンザンコウだかを経由した「新型コロナウイルス」もそうなのだろう。

で、そのウイルスが人間のヒトゲノムなんたら、レトロトランスポゾンなんたら、最近とアーキアの合体説なんたら……。

 真核生物の核がウイルスによって生まれたものと仮定すれば、我々はもとをたどればウイルスの子孫ということになる。p.17

へえ、そうなので。

その他、ウイルスのあり方や、エマージング・ウイルスの発生の危険などを学べてよかったと思います。おしまい。

 

こちらは、「病原体」なのでウイルスに限った話ではない。

 前述のように、病原体が宿主に重い病気を起こして宿主が死んでしまえば、この病原体は新しい宿主を見いださない限り存続することができなくなるはずです。

 このように、環境である宿主に病気を起こすのは不安定な生き方というほかなく、生物と環境の関係としては異常なものです。言い換えれば、病原体といわれる生物にも、実はもっと安定した関係を持てるような環境が他にあるのではないかと想像されます。

 生物を含むあらゆる寄生体は、本来、それを生み出した母体である環境に、依存していれば平穏に存続できるはずです。したがって、人間が感染症にかかるのは、その病原体にとって人間が本来の宿主ではないときに限るのではないかという疑問が生まれます。

ペストや狂犬病ウイルスも、本来の宿主種に対しては常在性を示す。そりゃそうだ、狂犬病がイヌを殺していては、イヌなんてとっくに滅んでいるかもしれない。COVID-19にしたって、コウモリだかセンザンコウだかの中にいる分には、べつに宿主を殺したりしない……わけだよな? せいぜいヒトにとって水疱・帯状疱疹ウイルスくらいの……。

で、この本、後半に行くと、環境に寄生する存在としてのヒト、ヒトを滅びに向かわせる「欲」とか、著者の考えたアナロジー世界にどんどん進んでいくので、そのあたり、「そういう考え方もあるかもね」くらいに読めばいいだろう。そんなところ。

 

……あれ、勉強になったかな。わかんねえな。まあでも、なんとなく、ぼんやりした印象をおれの脳に転写しておこう。なんか役に立つこともあるかもしれないし、立たないかもしれない。なにかの理解の助けになればいいかもしれないが、なんか間違っているかもしれない。でも、それがおれを死ぬ方に導くほどのことでもないので、どうでもいいのである。死をもたらすほどの読書はない、そのように考えている。すくなくとも、教科書的な本を読むにあたっては、そうでありたい。……というわけで、インチキ医師の標準医療全否定的な本にひっかからないよう気をつけようと思うわけである。

 

以上。