今のところの有馬記念

思い出せ、あのときのタップ

 昨夜、週刊Gallopを見ていてふと思った。「ミヤビランベリでいいんじゃないか?」と。
 このように感じたことは以前にもあった。タップダンスシチー有馬記念だ。

 思い出の有馬記念は?と聞かれたら、私は一昨年の有馬記念と答える。その年の有馬記念は、レースの数日前まで、あまり面白味を感じなかったのに。そう、競馬新聞の馬柱を見ていて、フッと何かが降ってきた。降ってきたとしかいいようのない感覚だった。それは「タップダンスシチーで勝負になる」と私に言わせた。私はブービー人気のタップダンスシチー単勝を厚めに、人気どころへ数点の馬連を買った。私のささやかな冒険だった。
 レースは一番人気のファインモーションが先手を取った。武豊騎乗の三歳牝馬だった。ファインモーションはマイペースで先行した。誰も鈴をつけに行こうとはしなかった。ただ一人、佐藤哲三だけは違った。十三番人気の馬で、するするとファインモーションに競りかけていった。
 多くの人はその光景を見て、悲鳴を上げたかもしれない。けれど私は、その光景に完全にしびれてしまった。たった一人の叛乱、たった一頭の下克上。そして、ファインモーションを振り切り、後続を振り切り、ゴール目指して逃走をはじめるタップダンスシチー。私は何度も「タップダンス、タップダンス」と言った。何度も「タップダンス」と言ったと思う。後ろからは、ただ一頭シンボリクリスエスが迫ってくる。どんどん差が縮まってくる。そしてついに、ゴール前で力尽きたタップを、黒鹿毛の三歳馬が見事に刺し殺した。まるで制裁のような差し切りだった。しかし私は、タップダンスシチー佐藤哲三に惜しみない拍手をおくりたいと思った。私は、競馬をやっていて心底よかったと思った。

2004-12-21 - 関内関外日記(跡地)

 俺はテレビ画面の馬に向かって、「来るな、来るな」というジェスチャーをしたことが二度あって、そのうちの一回がこのときのシンボリクリスエスだった。もう一度はエルコンドルパサーに迫るモンジュー。ともかく、このとき俺は、ふと、「タップダンスシチーでいいんじゃないのか?」と思ったのだ。
 ……って、「あ、この思いつきってタップのときに似ている!」と思ったことは何度もあって、まあその結果どんな馬券を買って、どんな風に負けたかというのはどうでもいい話である。ただ、とりあえずこれをこう記して、あとからまたどう考えがかわるかについても記録しておこう。

ミヤビランベリという馬

 で、ミヤビランベリだ。

 地味な、馬だ。自分の日記をふりかえっても、一度も記述がない。間接的に記しているのは以下である。

モンテクリスエス本命だったが、相手を絞りきれず、枠連で買っていたのだ。菊花賞につづき、枠連の代用。昭和の馬券。これも悪くない。

ひさびさの競馬プラス - 関内関外日記(跡地)

 このときのモンテクリスエスの同枠がミヤビランベリだ。枠連の代用で馬券を当てさせてくれたのだ。しかしまあ、G2、G3買った馬が、前走大敗とはいえ一気の11人気。こいつは天性の地味馬、馬券不人気馬かもしれない。
 だいたい、名前がいい。ミヤギロドリゴのミヤギ? と思わせておいて、ミヤビというマイナーな冠名(ミヤギもメジャーか?)。さらに、ランベリというよくわからない横文字。ミヤビランベリ。どうにも掴みがたいところがある。このとらえどころのなさがいい。
 父はオペラハウス。これもなにやら、実力のわりに甘く見られるタイプとしてはぴったり。これで母父サンデーサイレンスだったらしたらそれなりだが、そこにホリスキー。これはいい。さらにテスコボーイパーソロンと続くのもいい。いかにも日本の冬、中山2500、王道とは言いにくいこの国の競馬に合っていそうな気がしてくる。
 戦績の方も、朝日CCだけのタップに比べて、重賞3つ。その分、タップより人気しそうだけれども、そこまで人気しないだろうというところもある。だいたい、3歳牝馬が1人気しそうなところも一緒だ。これで鞍上が佐藤哲三だったら最高だが、吉田隼人だってなかなか渋くていいじゃないか。
 どうだろうか、ミヤビランベリ。今のところ、俺、ミヤビランベリ。そんじゃあ。