川崎大師でなんらかの祭りがあるというが、たんに坊主がぞろぞろ歩くようなものらしく、それならば小島新田に行こうと思った。
右折のタイミングを失って橋を渡ってしまう。なんとなく川岸に下りて、ふと海の方へ行ったことがないと気づく。
海に向かって進む。サイクリングロード、ではない。ゆっくりと、ゆっくりと。どこに行き着くかと思えば、空港だった。
すばらしい空港。
新世界。
忘れられた世界。
釣り人はいないが潮干狩り人はいる。
かつてなにかであったものになにかが取りつき、それすらもなにかであったものになってしまう。
悪くない。
目に見える先までとりあえず歩いて行ってしまう習性。祖父ゆずりだろうか。
ホモ・サピエンス・サピエンスの足型だろうが。もはや滅んでしまった。
ハード・ボイルドの撃ち合いの末に、滅んでしまった。
おろかな人類に惜別を。
なくなってしまった文明に哀悼を。
都市は巨大な墓碑なのか。
あたらしい生命が生まれ、生まれ、生まれ、こいつはもう死んでいるのか。
覗いたら空だった。
モーター・サイクル・ダイアリー。
シーガル・スクリーミング・キス・ハー・キス・ハー。バット・ゼイ・アー・ノット・シーガル。
フィッシュ、ベアー、フィッシュ、フィッシュ、フィッシュ。
けっこうギョッとするものだから。
飛行機の写真を撮るべきなんだ。
自転車に戻ろうとすると、長靴の男がいる。
ヘルメットを脱いでペットボトルを飲み干す。鬼殺しをあおる。
弁当を食って、魚も食って、
女を殺す。
また魚を食って、
スイカも食った。
女を燃やして、
小鳥が巻き添えになった。
かわいそうだね(本当に?)。
長靴の男はすぐに骨になった。
俺の自転車もこの有り様だ。
その自転車に乗って、河川敷でソフトボールをする人生を送るには、いったいいくつのものが欠けているのか、数えながら帰った。
そしてあなた、本当に自転車で空港まで行きたいのならば、ここにアクセスするべきではなかった。
おしまい。