おまえの子供は不良のガキに金属バットで殴られたりするだろう

土地という土地はだれかのものであって、無条件でおまえに分け与えられる土地というものは存在しない。生まれただけでおまえの居ていい場所というものは存在しない可能性がある。この世のどこに土地が余っていようと、空き家があろうと、金を払わなければそこで寝起きすることは許されない。生まれついて相続されるべき居場所がある人間もいるが、いない人間もいる。

土地のあてのない人間は新たに人間を生み出すべきではない。おまえたちの子供は家を追い出されて、深夜の路上をあてもなくさまようことになる。ゴミ箱をあさり、不良のガキに金属バットで殴られたりするだろう。

金を支払うことで生命というものは維持される。無条件で生きていていいという制度はこの世界に存在しない。パンも薬も有償なのだ。この世にいくら廃棄される食糧があろうと、何万人もの人間が生きていけるだけの富を所有している人間がいようと、それは決しておまえのものにはならない。

十分な資産のない人間は新たに人間を生み出すべきではない。おまえたちの子供は悪臭を放ちながら道端に落ちているだれかの食いかけのパンを拾って食うことになるだろう。不良のガキに金属バットで殴られたりするだろう。

金を稼ぐためには技能が必要とされる。技能もなしにお金だけ入ってくるということはありえない。だれかの要求に応えることによってのみ人間は存在を許される。それができなければ衣食住を失い深夜の公園に、早朝の路上に放り出されることになる。

十分な技能を与えられない人間は新たに人間を生み出すべきではない。今の時代に必要な技能はなにか。それはおそらく機械の言葉。機械の言葉を使いこなせる人間以外はすべて淘汰されて、首をくくる縄を探すことになるだろう。

おれには土地もなければ資産もなく、技能もない。おれは新たな人間を生み出す予定はないし、そもそもその資格がない。おれは努力というものによって技能を得ようとは思わないし、資産を作ることも、土地を有することもないだろう。行き着く先は自死か路上か刑務所だろう。おれのような人間が生まれてしまう可能性がある以上、新しい人間を生み出すのには最大限の警戒が必要だ。

そしておれのような人間が生まれなくなった暁には、ようやく皆が自分の住む場所くらいは用意され、無償のパンとスープくらい与えられるようになるだろう。人類に余裕が出るだろう。それまでに何十年、何百年、少なくともおれがそれを見ることはないだろう。