理由はわからないがひどく寒い。八月はもっと暑かったはずだ。

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理由はわからないがひどく寒い。八月はもっと暑かったはずだ。おれは布団から出たくない。いつだって出たくない。ベッドから下りて、歯を磨いて、シャワーを浴びて、服を着て外に出てなにかいいことがあっただろうか。

もっとも、いまのこの世界は、外に出ないのがいいことになっている。おれにとっては部屋で寝ていていいと言われているようで、少し心強い。強い心で横たわる。身重く横たわる。そして、携帯端末でネットなど見ている。

レンズが故障した。MINOLTA AF MACRO 100mm f2.8だ。単焦点レンズ、これのピントが動かなくなった。AFでもMFでも、頑として回らない。他のレンズは使えるので、本体の問題ではない。もはや先のないαマウント。メルカリあたりで買おうと思う。

終わりは近い。COVID-19、新型コロナウイルス、これをどうするべきなのか。緊急事態宣言は必要なのか。前回の宣言では確実に感染者を減らすことができた。たった一度だけれど、エビデンスがないとも言えないかと思う。

一方で、経済が死ぬ。そこがむずかしい。だらだらと自粛ムードが続くのがいいのか、いったん首をしめてしまうほうがいいのか。首をしめたら死ぬ人間も出てくる。だが、ゆっくりと真綿で首をしめられて死ぬ人間も出てくるだろう。

とまれ、人間がやがて死ぬことは今のところ確実なのだから、死すべくして死ぬのは当たり前だという見方もできる。だとすれば、できるだけ死を先延ばしにするのもいいかもしれない。ただ、ちょっと順番が早まったり、順序がひっくり返ったりするかもしれないが。

おれの職場とて、もう一度緊急事態宣言のような状況になったら、かなり早く死ぬだろう。とはいえ、「あまり経済動いていないな」という現状がだらだらと続いても、それなりに早く死ぬ。その会社に依存しているおれは、かなり早く死んだり、それなりに早く死ぬことになる。

おれは、緊急事態宣言が必要なのか、そうでないのか、はっきり言ってわからない。欧米の状況を見て、それに比べて日本は抑えられているのだから、このまま行こうという気もわからないではない。一方で、このまま行ったら欧米のようになるとなったら、それも最悪だ。いずれにせよ悪い。

もう「凶」を引いてしまったのだ。だれが? 世間が? それでもまだ丘の上で優雅に暮らして、見下ろしている連中もいるだろう。そいつらを引きずり下ろしたりできたら感染症も仕事をしたといえるだろうが、先に死ぬのは下々の人間だ。おまえらもここまで来いと言いながら、くだらない夢を見て死ぬのだろう。金持ちめ、くたばってしまえ。

「土地に囲いをして、これは『俺のだ』と宣言することを思いつき、それをそのまま信ずるようなごく単純な人々を見出した最初の者が、政治社会(国家)の真の建設者であった」

ルソー『人間不平等起源論』

ああ、なぜわれらの祖先は単純に信じてしまったのだろうか。そこから始まったことなのだ。だからウイルスは遠慮するな。だれをも不幸にしろ。平等に不幸にしろ。たとえそこに連帯が生まれずとも。

普段、国家からの自由を説いている人間が、感染症については政府に強権を与えようとしている、と揶揄する人間がいる。それは違うように思える。こと感染症に関しては、個人個人の努力や対処では抑えきれないものがある。おれだけではだめなのだ。おれとだれかのだれか。あるいはあなた。だれかかあなたかあその行動によって、関係性においてウイルスは伝播する。これを抑えるのに国家が強権を発動することに、普段、自由を愛する自分は反対しない。感染症は特殊な状況だからだ。もちろん、特殊な状況を抜けたあとも政府が強権を持ち続けることには反対する。

それにしても寒い。この地球になにが起きているのかわからない。四月になれば少しは暖かくなるのだろうか。八月になればもっと暑くなるのだろうか。その理由を知りたくもない。おれはいつだって部屋で寝ていたい。