裁判もはじまっていないのでそれが犯罪であったかどうかわからぬが、押し花ビジネス詐欺で60億円である。世の中にはそれだけの金があふれていて、あふれかえっていて、押し花ビジネスにも押し寄せて60億円である。この世の中には押し花ビジネスよりももっと金になりそうななにかはたくさんあるだろうし、それが詐欺であろうが真っ当なビジネスや投資であろうが60億円がちっぽけに見えるくらいの金があふれていて、あふれかえっているのだろう?
どうしておれはそのあふれかえった金にありつけないのだろうか。おれは金にありつけない。おれには金にありつける能力がない。むごい話である。一番足が遅いのがわかりきっていているのに、徒競走を走らされる。タイムオーバーを連発するような馬は殺処分されるが、少なくともいまの日本の人間世界にはそういう制度がない。常に不安にさいなまれ、惨めで寒い思いをしながら生活しているふりをつづけなくてはならない。そこには生もなければ活もない。
やがておれは自分で自分を殺処分しなくてはならない。おれには生きていくための金にありつくだけの能力に欠けているから、始末をつけなくてはならない。それがわかりきっているのに、生きているふりをしなくてはならない。それはとても惨めで寒いことだ。それはそれで酷いことだ。殺してくれ、殺してくれ、おれを殺してくれ。殺したおれを押し花にしてくれ。不幸に生まれてきたペラペラの押し人間にしてくれ。それを子供たちに見せてまわれ。全国をまわれ。「この世で公務員になれない人間の末路はこのようなものなのです」と解説してやってくれ……。