不思議の招待状 大阪無人オフ会 その1-當麻寺編

はじめに

おれは先ごろAmazonの「ほしい物リスト」を公開した。想像を越える物品が届けられ、なにがなにやらわからぬ気持ちになっていた。そんななかで、Amazon公式でない出品者からの購入でおれの住所と名前が割れてしまった。割れてしまったおれに送られてきたのがこれである。

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5月14日、5月15日の新横浜―新大阪間の新幹線往復きっぷおよびシティホテルの一泊券である。おれはもうなにがなにやらわからぬでは済まされぬ気持ちになった。

あなた、いきなり大阪行きの新幹線の切符を、見知らぬ人から贈られたことがありますか? 少なくおれの人生に今までなかったことである。

贈り主さま曰く「大阪をぶらついて写真など撮ってくれたまえ。べつに大阪のマクドで一日読書して過ごしてもかまわん。あと、私とは会うことはないから、一人で勝手にやってくれ」とのことである。

おれは大変にうろたえた。もしもこれが「ぶらり大阪あたりに来ないか? チケットを送ろうか」という申し出であったならば、「とてもじゃないがそんな申し出もったいなくて受けられません」と応えたであろう。ところが、手元にもう新幹線(ああ、おれの大好きなすばらしい新幹線!)の切符と宿泊のチケットがあるのである。そして、贈り主からのメールにて「自分でもこんな馬鹿げたことをしていいのか逡巡した」との旨が伝わってきた。おれはその真摯な態度に乗った。乗るしかないと思った。

というか、オフ会でもなく、ただ一人旅をしてくれとチケットを贈られることなんて、人生に一度あるかないか、というか、一度あるだけで驚異のことではないですか。それも、おれがこの申し出に乗ることにした理由でもある。もう、貰っちゃたものはおれのものだからね、好きに使わせてもらうぜ。

当麻寺

さて、大阪。おれはどこへ行くべきなの? チケットが贈られたのはゴールデンウィーク前。それからずっとおれは大阪のことばかり考えていてといっていい。大阪といっても、京都や奈良、神戸あたりまで行けるんじゃあないの? 兵庫の地方競馬場が開催していないが、京都開催の中央競馬もある。あるいは、京都といえばはてな本社がある。はてなの端株主として外見を眺めてみるのもいいんじゃないか? とも思った。それと「かすうどん」。これである。上原善広の本で知って以来、気になってしかたなかった食材である。関東ではまず見ない。これを食べよう。

……そして、当麻寺。おれが修学旅行で京都、奈良付近を訪れたのは相当昔で、奈良では鹿と、なぜか班別自由行動でお好み焼き屋に入った思い出しかない。とはいえ、飛鳥というか奈良はいい、という思いは強い。おもに、折口信夫の『死者の書』とそのアニメによるものではあるが。ともかくおれは中将姫のファンなのである。曼荼羅、山越しの阿弥陀

折口信夫の『死者の書』読んだらテンションあがった! - 関内関外日記

して、その当麻寺で毎年5月14日に「中将姫さまご縁日 練供養会式」がとり行われるというではないか。この情報、最初にチケットを頂いたときには気づいていなかった。當麻寺のサイトにもアップされていなかったのではないか? ともかく、これに気づいたおれは「おれは當麻寺の練供養に行くのだ」という理由を作ることができた。奈良に行くから京都はパージだ。遅めの発車時刻から當麻寺のイベント開始まで図ったようにぴったり。そんなふうに予定を立てた。

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そしておれは新横浜からすばらしい新幹線に乗ることになった。のぞみ225号。検索すると東海道新幹線火災事件などと出てくるが、これも中将姫のお導きであろう。南無阿弥陀仏

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そして、新幹線は速いんだぜ。バンバン飛び去っていく風景に脳内も加速していく。

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とはいえ、せっかく富士山が見えるようにと配置していただいたのだけれど、富士山雲隠れなのでした。

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駅弁とか広げちゃって、もう、どうしようという感じ(食べるほかないのだけれど)。

でもって、話はいきなり大阪に飛ぶ。新幹線はそのくらい速い。

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おれが「お、大阪だ……!」と思ったのが、まずこれである。エスカレーターの歩いて登り降りの良し悪しは置いといて、人が右に寄る。もちろん話としては知っていたが、現実に目にすると、これが関西か! というインパクトがあった。おれも慣れない右寄りでエスカレーターを登ったりする。

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こんな映画館の宣伝も、こっちじゃ見ないよな、とか思う。というか、これは何線だったっけ? 予定では新大阪から市営地下鉄で天王寺。新幹線チケットで天王寺まで行く手段もあったが、乗り換えが面倒そうなので、いきなり地下鉄に行ったのだ。もちろんSuicaが使える。Yahoo!の乗り換え案内とSuica、実に心強い、というか単に便利すぎ。あと、いきなりレリゴーの映画の魔女のコスプレをして、ネズミの国のグッズに身を固めた若い女性がどっかの電車に乗り込んできて「これが大阪か!」と思った。思ったが、しかし、そういう人が横浜や東京にいないとは言えない。

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それでまあ、目指すは奈良。予定より少し早く(とちっても十数分だが)近鉄に乗って當麻寺の方へ。というか当麻寺駅へ。特段混んだ様子もない。気づいたら2両編成になっている。大都会大阪からちょっとでこの落差。やや面食らう。とはいえ、進行はYahoo!路線どおりである。このあたり、旅の醍醐味をやや薄めているかもしれない。とはいえ、遠い土地の時刻表を紙で入手して予定を立てる苦労などはしたくない。

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途中、「古市」とかいう駅で乗り換える。そこまでの電車だったか、女子小学生の集団と乗り合わせたが、関西弁(おれには細かな分類がわからないのでこう表現する)をナチュラルにしゃべっていた。当たり前の話だが、おれが日ごろ暮らしていてナチュラルに関西弁をしゃべる人というものに出合う機会などほとんどないので、「おお、関西」と思った。

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そして當麻寺京急大師線港町駅くらいの駅。臨時かどうか、駅員さんが何人かいて「混み合いますので、お帰りの切符をお買い求めください」とアナウンスしている。まあSuicaだから関係ない。というか、そこまですごい人が降りるわけでもない。なにかイベントがあるな、というくらいの人数である。おれはそのゾロゾロについていく。

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川崎大師のように「門前町!」というふうでもなく、普通の、あるいはとてもお金持ちそうな家の間を通って行く。途中、観光会館のようなところがあって、中将姫のキャラのきぐるみを見かける。5月中旬にしてはガンガン日が射していて暑い。ところどころに土産物屋などがある。

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そしてやって来ました當麻寺。これは中将姫の足あとということで、お賽銭が置かれている。なんにでもお賽銭というのは日本人のみかどうか知らぬが、関東より関西の方がその傾向が強いのではないか? とはこの旅で感じた。

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着いたのは3時ころで、イベントがはじまるのが4時。手短に中之坊という有料エリアに入る。イベントが近いせいか人はほとんどおらず、中庭や展示品などを見ることができた。たいへんよい感じの庭園だった。どこかのテレビ局が入っていて、展示品を撮影して、その場でナレーションと合わせてチェックなどしていた。ローカルニュースかなにかで流れるのだろうか。

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折口信夫a.k.a.釈迢空の歌碑などもあった(といって、歌碑でなく看板を載せる)。「ねりくやう」はまさに今日のことだぜ。もりあがるイベントなんだな。うん。「はたと」以後は意味わかんねえけど!

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でもってその「ねりくやう」。通り道が設置されていて、両側と、真下(!)に始まるのを待っている人がいる。人混み度といえば中程度(ってどんくらいや)で、4時くらいにのこのこ近づいていっても無理なく近づけた。

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そしてとりあえず中将姫像が上から下へ。

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そしてお坊さんの行列。なにか笑い声が起きたと思ったら、どうも一人躓いて転びそうになったらしい。

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そしてなんか投げる。なんかをゲットできるとラッキーらしいが、おれの前はただ通り過ぎるだけだった。

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すごい、ゴージャス。

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そしてストイック。

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なにやら仏具。

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そして行進はあっちからこっちへ。

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そして登場するのが菩薩・ザ・ゴールド。

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ヘイローも光ってる。というか、おそらくこの5月14日という日の4時ごろの太陽の位置がビシっとくるようになってるんだろう。たぶん。ただ、この古い古い儀式がはじまったころは、ここまで暑かったわけではないだろうかとも思う。年によるだろうが。

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ためしにカメラの顔認識をオンにしてみたら、この能面は把握するが、ゴールドの菩薩はだめだった。

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この菩薩ムーブはかなりおもしろくて、エキサイティングだった。仏像が動く! という感じ。踊る! という感じ。

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まあ、写真じゃ伝わらないだろうが(べつにおれがiPhoneで撮った動画アップしてもいいけど、もう誰かやってんだろ)。

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うん、これはいい。これはおもしろい。

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なんつーのか、これも仏教、という感じ。當麻寺はニ系統あるわけだけど、この派手さは真言系なのかしらん。

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こんなんゾロゾロ出てくる。視覚的娯楽の少なかった千年前の人にとっては『マッド・マックス・怒りのデスロード 4DX版』くらいのしろものだったに違いない。

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V8! V8!

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おお、イモータン・ジョー!(ちがうにもほどがある)。

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逆光の中を列は進む。

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お稚児さんの行列などもある。

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これは孔明の罠

f:id:goldhead:20160515183451j:plainそしてまた中将姫が召される。これにてイベントおしまい。イベント中、お経が流れていたのだけれど、最後のほうになっていきなり喜多郎の「シルクロード」が流れてきて「なんじゃそりゃ」と思った。なんかこう、全体的にゆるいよ! 嫌いじゃ無いけど!

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「ねりくやう」が終わって、本堂が開放され、お賽銭など投げ込んで祈る。なにを願わない、ただ手を合わせる……ようにしているのだが、なにかいろいろ雑念が湧いてきてよくなかった。そういう場合は真言を唱えればいいのだろうが。

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これが「ねりくやう」の道。

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帰り道、人の流れは散っていく。近所の人なのだろう。わざわざ横浜くんだりから来たりしたのはおれくらいか。山(二上山?)に日が落ちるところを撮ろうとしたら、太陽に顔認識が一瞬出た。山越しの阿弥陀? ほんとうの話だぜ。

そしておれはまた近鉄(各駅に名所掲示板みたいなのあるけど、そっけなさすぎて渋かった)に乗って大阪阿倍野橋を目指したのだった。

つづく。

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