不思議の招待状 大阪無人オフ会 その2-夜の大阪編

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あべのハルカス

夜、飯を食うところは決めていた。目的地の駅は地下鉄の「なんば」だ。「なんば」には「天王寺」で乗り換える必要がある。が、ほんのちょっぴり離れた近鉄の「大阪阿倍野橋」という駅から歩かねばならない。行きは時間がなかったので、誘導に導かれるまま地下の道を通って「大阪阿倍野橋」まで行ったが、帰りにふと思った。「阿倍野橋駅」……「あべの」……「アベノ橋魔法☆商店街」?……いや違う、「あべのハルカス」があるんじゃあないか。ランドマークタワーを抜いた超高層ビル。一応は横浜市民のおれだ、その目に焼き付けておく必要がある。あと、グリコの看板あたりは夜景がいい、とのことだが、まだ明るかったから時間を潰す、という理由もあった。

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これけ?

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いや、違った。なんだこれは。

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間違いない、HARUKAS書いてある。周りがギチギチにビル立ってて、眺めどころがわからんが、ともかくでかい。でかかった。ランドマークと比べてでかいかなぁというと、でかいかもなぁという感じ。でも、中に用事はないので、そのまま地下鉄に向かった。今思えば展望台行ってもよかったかな。でも、おれ高所恐怖症だから。

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ようわからんけど、あれが通天閣だろか? 土曜の夜、人は多い。多いけれど、東京の街とはなんか違う。横浜ともなんか違う。あんまりセカセカしてない感じがする。人は多いが、そんなに居心地悪くない。むしろいい。うまい言い方が思い浮かばいが、ちょっとのんびり、ゆったり……やっぱりちょっと違うな。でも、そんな印象を受けた。

憧れのかすうどん

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さて、「なんば」の夜である。目的地をときどきiPhoneGoogle Mapsで調べながら歩く。が、入り組んでいてよくわからない。まったく逆方向に行ったりしてしまう。まあ、いいけど。ところでおれの心もちというか、体裁というか、ロールというか、そういうものは「初めての大阪出張にきて、ついでにちょっと見物をしているサラリーマン」である。新幹線ではおれのと同じような黒くて大きめのブリーフケースを持ち込んだサラリーマンも多く、「やったぜ」と思った。思ったが、おれは花柄のシャツにジャケット、下はジーンズ、メレルの革靴、耳には三つのピアス、他人からどう思われたかは謎である。

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http://www.aburakasu.com/

さて、目的地は「かすうどん」のチェーン店「加寿屋(KASUYA)」であった。大阪のうどん屋では普通にメニューにあるからどこでもいいし、実際にそういう店を電車の車窓から見たりしたが、やはり店名にまで「かす(あぶらかす)」を使っている店なら間違いはなかろう。そして、おれが「あぶらかす」を知ったきっかけになった上原善広の本にも「最近はチェーン店まである」とあった。それに、チェーン店なら一見さんの出張サラリーマン一人客にも入りやすいだろう、ということである。

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入ってみておどろいた。おれの想像していたチェーン(各種牛丼屋、リンガーハットなど)とは違った。狭い店内にカウンターが並んでいてお客さんがずらりとうどんを食っている。ただ、店の最奥に空き席があった。大きめの鞄にカメラをぶら下げたおれは、「すみません、すみません」と言いながら、後ろを通らせてもらった。

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さて注文である。「あぶらかす」を食いに来たのだから「かすうどん」一択だろう、というところをあえてひねった。「すみません」とカウンターの中一人忙しそうな主人を呼び、おれはこう告げた「肉うどんにトッピングでかす大盛り、それと生ビール」。なんかのグルメサイトで肉うどんが美味しいとあったような気がしたのである。一番片隅の席は落ち着く。まずジョッキでビールが来る。のどが渇いていたので沁み入る。そういえば、おれは家で一人アルコール摂取することは毎日だが、外で一人でアルコールを摂取するのは初めてではないか、などと思う。

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そしてやってきたうどん、これである。肉、かすらしきもののほかに長ネギととろろ昆布が乗っている。とりあえずあぶらかすらしきものを口に入れる。パリッとした歯ごたえが少しあり、ついでやわらかい甘みが口の中に広がる。「ああ、これはおれが食ったことのない臓物だ!」と思う。そしてうどんを喰う。薄口の汁に(おれはこれに関して関東より関西のやつのほうが美味いと前から思っているのだが)、ほのかに柚子の香りがする。かすの量もいい具合。肉も美味い。ちょっと油っぽくなったらビール。合う。いいじゃないの。おれは喰うのが早いが、できるだけゆっくり箸をすすめる。隣の親子連れが「ライスください」と追加注文。炭水化物に炭水化物、そういうのもあるのか。あるいは麺だけ先にやって、白米をスープに投入、というのもいいかもしれない。別の客が数人出ていく。すると、出張風でない若いサラリーマンが一人入ってくる。椅子に座るやいなや、店主が「肉うどんに玉子ね」と言う。「いつものやつ」の一言もない。常連中の常連だ! とかなんとか言ってるうちに食い終わり、飲み終わる。たいへん満足だった。「ごちそうさま」、そして会計。さいごに「おいしかったです」というと、「わざわざありがとうございます」などと言われる。そのニュアンスがおれには文章で再現できない。常にいそがしくカウンターの中を動きつつ、丁寧すぎるほど丁寧に、「はい、すんまへん」、「どうも、どうも」と言って店の空気を作っていた。その空気がよかった。テレビでは華原朋美が乗馬の大会に出ていた。この店にはまた来たいと思った。というか、関東に進出してほしい。

グリコの看板、そしてホテルへ

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さて、ついでにグリコの看板だ。Google Mapsでも「名所」のマークがついている。一杯ひっかけていい気分。お? あれかいな? でも、ちぎれとるで。

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と、反射でした。なんとなく街中に外国人観光客が少ないなと思っていたが、ここはちがった。グリコのポーズをとって撮ってもらう人、自撮り棒を使う人、たくさんいた。海外の観光案内にも「大阪ならここや」と書いてあるのだろう。

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そして道頓堀。街の中に川があるというのはいいものだ。せっかくなのでダイブしよう……とは思わなかった。おれは横浜から来たカープファンであって、シーズンもはじまったばかりである。

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そして夜の街を歩いて……と言いたいところだが、ほとんどアーケードを通って心斎橋の駅に向かった。土曜の夜、賑わっていた。おれは出張中のサラリーマンなので黙ってホテルへ向かうだけである。當麻寺あたりで直射日光を浴びすぎたせいか(帽子必要な天気だったね)、少し頭が痛い。

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そして地下鉄へ。大阪初心者はとりあえず「御堂筋線」というのをおさえておけばいいのかな。

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しかし、「なかもず」ってなんだろ。って調べたら「中百舌鳥」だった。読みにくいからだろうか。読めない駅名、地名というのはわりと好きである。

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指定されたホテルは「本町」という駅に近い。階段を登ってみて、なんばや心斎橋あたりとの違いに驚く。オフィス街なのだろうか、広い道路、少ない人影、夜でも混んでるスタバ。どこか関内の海側なんかを思わせる。街路樹のイチョウは、やはり関西の方が少しばかり温かいのか、横浜に比べてよく出ているように思えた。

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そして突如、大塩平八郎終焉の地。大阪を侮ってはいけない。途中、コンビニに寄って、500mlの缶チューハイと、バナナがまるごと一本入ったスイーツを買う。酒がないのが不安(プリントアウトしてアルコール依存症の専門医に見せるべき)と、ひょっとしたらうどんだけでは腹が減るのでは? との考えからである。そして大阪スポーツも買った。

大スポ。ヴィクトリアマイルの一面予想は虎石で、東スポと変わらないが、中面競馬面は「競馬ダイスポ」だった。本誌予想も違えば、印を打っている面々も違う。「闘竜」だの「妖刀」だの「闘券」だの強そうだ。一番上はこちらでもおなじみの「仕掛人」上田だった。

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ホテルのカウンター。プリントアウトされたJRのパックの紙を出す。「追加で朝食もお願いできますか?」。明日はあまり時間がない。いくら食い倒れの街でも朝からたこ焼きを食う気にもなれない。というか、そんな早い時間からやっていないだろう。「600円になります」。あれ、インターネットで見たら朝食ビュッフェ1,200円だったのに? と思うと、キャンペーン中とのこと。部屋は11階。部屋の電気のスイッチの場所がわからず、「フロントに聞こうか?」と思うくらい悩んだ(ベッドのまくらの位置の真横にあった)。テレビをつける。たいして関東と変わらないが、アナログ放送で中国か韓国の放送が入っている(のだと思う)。NHKなど、首都圏ニュースのところで関西のニュースになるくらいしか違いはなかった。

シャワーを浴びて、缶チューハイとバナナのスイーツ。とくにすることもなく、明日のぼんやりした予定を考えたり、窓を開けて写真を撮ってみたりする。そうだ、「自転車注意」の文字が見えるだろうか。自転車進行方向の青矢印も引かれている。大阪の自転車。車道を行くロードバイクも少なくないし、ママチャリも多い。「え、こんなところまでママチャリで?」という感じで、幅を利かせているといってはなんだが、自転車がこっちに比べて堂々としているな、とは街の印象の一つである。

いつもの薬を飲んで、いつものようにスリープスプリントを装着し、いつものようにiPhoneで声優のラジオを聴きながら寝た。

 

つづく

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