不思議の招待状 大阪無人オフ会 その3-通天閣・大阪城・帰宅編

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ホテルの朝と公園と

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大阪二日目の始まりである。夜景のためのシャッタースピードのままで撮るからこうなった。シングルの予約だが部屋はダブルだった。悪くない。悪くないが、簡易髭剃りは2ついらない。枕も2ついらない。起きたのは6時半くらいだったか。昨夜もシャワーを浴び、朝もシャワーを浴びる。バスタオルが2枚ある。これは悪くない。

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7時過ぎに朝食ビュッフェへ。さすが大阪だけあって、たこ焼きがあった。おれがこのたびの旅で食べたたこ焼きはこの2個のみである。

して、思っていたほど朝の食欲もなく(おれは早食いでわりと大食いでもある)、コーヒーとデザートのヨーグルトをとっていたときのことである。お腹に、なにか異変を感じた。すぐさまコーヒーを飲み干し、食器を下げ、係の人に「ごちそうさま」と言って部屋に戻る。トイレに駆け込む。……どうやらおれは食い倒れてしまったのか。食い倒れるほど食っていないのに? 思うに、缶チューハイとバナナのスイーツのせいではないか。自分で言うのもなんだが、あれは食合せが悪かった。

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いつもの薬に加えて、赤玉はら薬を飲む。古い薬だろうが、これは効く。そういう意味では、昨日の當麻寺で陀羅尼助でも買っておけばよかったか。しかしまあこれで、これ以上食い倒れるような食事、というルートはなくなったといっていい。おれは早々にホテルをチェックアウトした。

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チェックアウトして、地下鉄の駅に向かうところ、すこし回り道して靭公園(うつぼこうえん)を通ることにした。

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なんでこんなことになっているのか、皆目不明だが。

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公園は都市の中の緑地として気分のいいものであった。バラなども手入れされていた。

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悪くない。

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そしてファンキーな大阪の水道局。いや、違うか。それはともかく、「四つ橋線の入り口から御堂筋線まで行けるじゃん」と思って近くの入口から入ったら、延々と地下道を歩くはめになった。まあ、地上を歩いても同じ距離なのだけれど。

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そして御堂筋線。競馬の特別競走名にあるにもかかわらず、おれはずっと「しんさいきょう」だと思っていたよ。

通天閣午前9時

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降りた駅は「動物園前」。

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目的地は言わずもがなの……。

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言わずもがなの……(アゲイン)。

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通天閣、キタコレ。

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大阪にまた来ることなどあるだろうか。通天閣、行ってみるしかないでしょう。ベタでいいのだ、ベタベター(TOKONA-X「知らざあ言って聞かせやshow」のノリで。ところでおれは行き帰りの京浜東北根岸線横浜線以外でイヤホンをつけなかった。電池の節約もあるが土地の言葉と新幹線の体感を重視したからである)でいきましょう。

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とはいえ、この大阪のベタベターなセンスには負ける。朝の9時ちょっと前で、人影もまばらというあたり、なにやら奇妙さは増す。

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どうせなら登ってやろう通天閣。……の展望台入り口横に坂田三吉の記念碑。しかし、妻の名前は実際には小春ではなかったはずだが。まあいいか。浄財箱も謎だが、まあいいか。

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なにかこう、なにかせずにはいられない関西のセンスというやつだ。いい加減に慣れろ。

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そして登った展望台。向こうに見えるはあべのハルカス。正直、間近で見るよりも圧倒された。こりゃあすげえや。ほんとにでけえよ。

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そして内部はこれでもかというくらいゴールド。ゴールドヘッドさんも参ってしまう。記念撮影係の人だけ朝からハイテンションパルだった。ベタな大阪の芸人的ハイテンションを見たのは2日間でそこのみだった。おれはそっとビリケンさんの脚に触れて、スッと過ぎ去った。

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こういうのはあれか、我が地元である横浜は寿町にあるのと一緒か?

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ドーム球場が見える。これはあれか、横浜スタジアムより立派か?

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それでもって、これは石川町近くのラブホ街と一緒か? つーか「看板見たで!」でなんの特典があるのか。「看板見ました」ではだめなのか? 大阪は謎である。

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エクセスポルノも謎ポルノである。

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謎多き通天閣にはウォーズマンロビンマスクが展示されていた。謎が多すぎる。

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そしてまた浄財。どこの国のかわからぬ紙幣が見られる。というか、開館の朝9時直後に通天閣に登るのは、弾丸ツアー的な外国人観光客ばかりだったといえる。それに混じって出張ついでのサラリーマンであるおれ(まだ言うか)くらいのものである。

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串かつだるま。大阪はだるまだらけであったといっていい。それだけの味はあるらしいが、どこも混んでいていて、それもカップルや集団ばかりで、ひとりのおれは気が引けて並ぶことができなかった。まあ、この日は腹の調子が、というよりこんな朝に開いてない。

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しかしまあ、通天閣付近、ちょっといい感じの路地(中上健次的「路地」ではないよ)がある。どこか落ち着く感じがする。

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なんか渋い映画館があったりする。この感じはちいと洒落たシネマ・ジャック&ベティあたりでは太刀打ちできない。

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そしておれの放置自転車写真コレクションも増える。そういうコレクションがあるのだ。前はマルフクの看板を長いこと集めていたが、最近はあまり見なくなった。とはいえ、近鉄の車窓から2枚いい感じのを見かけた。写真には収められなかった。

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動物園には行かなかった(というかまだ開いてなかった?)。とはいえ、次の目的地に行くため、その辺を通り抜けてJRの駅に向かう。この動物はその途中で見かけた。一瞬、ライオンかと思った。むろん、猫である。歴戦の強者という感じがする。おれが今まで見た一番強そうな野良猫は、東扇島でちぎれかけた片足を引きずっていたやつだが、それと同じくらいの強さを感じた。

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そしてJRの環状線へ。そこで見かけたこれは、懐かしい京浜東北線と思い一枚。最近の関東の電車はみなシルバーでつまらない。目的地とは逆方向に行けば大阪港駅。大阪の海を見たいという思いもあった。あったが、時間が限られている。帰りの新幹線の時間である。おれは海沿い埋立地の公園が好きで、自転車でもよく行ったものだが、天保山公園は諦める。

大阪城

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そしてたどり着いたのは皇居外周……ではなく大阪城公園。これである。

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ここまで来たら通天閣から大阪城。ベタベターや。しかし、大阪城公園は広い。スペースがある、という意味で広い。

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石垣もでかい。しかし、なかなか大阪城は見えない。

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と、思ったら見えた。おぬしなら、どう攻める?

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チケットを買って、階段を登りまする。エレベーターで一気に最上階まで行って、下りながら展示品を見るというのがスタンダードらしいが、あまりにエレベーターが混んでいたので、歩いて登りながら見ることにした。ちょうどいま『真田丸』にハマっていることもあって、展示品には興味深いものも多かったが、じっくり見る時間はなかった。しかし、天海僧正の鎧兜ってのはなんだろね。あと、大阪城も外国人観光客が多かった。横浜なんかに比べて外国人少ないな、と思ったが、グリコ看板に通天閣大阪城、有名スポットには多い。

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登ったよ、という証拠。この日も暑かった。暑かったので上着を脱いだ。上着を脱いだら半袖のシャツ。展望台では風が気持ちいい。とはいえ、これから階段を降りなければならない。下りエスカレーターはないのだ。

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ラジオ体操などで日頃から鍛えていればよかったのだ。しかし、こういうラジオ体操会もあるのか。

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あるんだな、確かに。途中、暑さに耐え切れなくなって、抹茶ソフトクリームを食べる。腹の調子? 赤玉はら薬がどうにかしてくれるさ。おっさん一人でソフトクリーム? 知った話か。

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お堀のクルージング。これもゴールド。大阪のゴールド精神には勝てる気がしない。

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行きに「スペース広いなあ」と思ったところで、バンドなどの屋外演奏の準備が進められていた。そういう風にも使うのか。一箇所人だかりができていて、なにかアイドルがパフォーマンスの準備をしていた。せっかくだから見ていこうかと思ったが、なかなか始まらず、時間が来たので立ち去ることにした。彼女たちに祝福あれ。

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そして大阪駅。大阪駅の屋根。大阪駅から新大阪駅新大阪駅でおみやげを買い求める。行きにかすうどんのレトルトのようなものを見かけたが、見つからない。かわりに加寿屋のかすあられというのを見つけて買う。自分用。会社用にお好み焼きせんべいを買う。フリーズドライの具材を用い、お好み焼きの味がするという(じっさい、ソースがあれば完璧なほどだった)。

そういえば、おれは大阪で粉物を食していない。毎日食しているから、正直たこ焼きも勘弁な、というところもあるが、それもどうかと思い、構内のたこ焼き屋に並ぶ。並ぶが、前の人に「10分かかります」と店員さん。電車の時刻に間に合わないではないが、熱々のたこ焼きを急いで食べるのも面倒に思い、列から抜ける。抜けて、駅弁を買おうと思う。そうだ、「だるま」のソースかつサンドというのがあるはず……と思うも見つけられず、やけに高い梵(「そよぎ」とは読まないのだろう)という店の「ヘレカツサンド」のハーフを買う(「だるま」のは新幹線切符で入場したあとに見つけた)。ハーフでも1000円する。しかし、新幹線の特別感がそれを許す。ついでに酒を買おうかと思ったが、自重してノンアルコールビールを買う。ホームにあがってキオスクのようなところでレトルトの「どて焼き」を買う。

先発ののぞみが出発する。反対側のホームでは九州へ行く(から来た?)新幹線が停まっている。おれの乗るのぞみがやってくる。おれは乗車票を確かめて、列に並ぶ。そして……。

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おれは新幹線に乗った。

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新幹線は速い。

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富士山はまたモヤにつつまれて見えなかった。それでもよかった。

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ヘレカツを食って、車窓を眺めて、たまに写真を撮って、うとうとして……新横浜に着いてしまう。

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おれは日常の世界に戻ってきてしまった。

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しけた横浜の片隅に戻ってきてしまった。

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いつもの猫もふつうだ。

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それでもおれの心のひとかけらは大阪においてきた。心のひとかけらは大阪にありつづける。そしてまた同時に新幹線の速さで横浜に向かい続けている。おれの心は新幹線の速さで遠ざかりつつある、永遠に……。

すべての旅の終わりに

おれは謎の人からの不思議の招待状が送られてから、ずっと大阪のことを考えていた。大阪に着いてからは旅を満喫した。希死念慮なんかふっとんでいた。有り体にいえばそうだ。有り体がなんだ。体が有る。いいことじゃないか。おれは楽しんだ。楽しみを楽しむことはむずかしい。少なくともおれにはむずかしい。むずかしいことだった。けれど、ひょっとしたら、おれにも楽しみが楽しめるかもしれない。喜びを喜べるかもしれない。一泊二日の国内旅行でなにを大げさな、と言われるかもしれない。それでもおれはそんな風に思ったのだ。おれにそんな切符をいきなり送りつけてきた人に、最大限の感謝をおくる。

 

おしまい。