『キル・ビル』Vol.2

ASIN:B0000YTR5A
 唐突に『Kill Bill』の続編を観た。今調べてみると(日記は便利だ)、前編を観たのは半年以上前だ(id:goldhead:20040925#p1)。だから、前編については「なんかかっこよかったと思ったと思う」程度の印象しかなく、かなり真っ新な気持ちで続編に望んだのである。しかし、見終わった後に思ったのは、そのスパンで正解だったんじゃないかということだ。前編と続編ではテイストが違いすぎる。そして、後編は後編一本としてかなり完成されたデキだったと思うのだ。もちろん、前編のキャラの基礎知識があるという前提で。前の感想には「上映時間の都合で二つに分けただけだ」という誰か評論家の意見を書いたけれど、結果的に言えばそれは誤りであった。ただ、それはそれで前編のケツが置き去りにされたという問題が残る。ただ、自分の場合は六ヶ月の冷却期間があったからよかったということだ。
 しかしまあ、前作でオーレン石井だのGOGO夕張だの特異なキャラクターがいろいろと出てきたけど、こちらも負けず劣らずだ。しかも、その魅力はヘンテコなギミックによらない印象を受けた。特にいいのがビルの弟役のバドだ。マイケル・マドセンという役者の名前は今回はじめて知ったけれど、何とも言えない雰囲気がある。パオ・メイ師匠はちょっとヘンテコだが、それでも恐さが出ていていい。あと、主人公がビルの居場所を聞きに行った、ビルの育ての親の人。単に座って話をするだけなのに、なんとも言えぬシーンに。ボツになったビルの格闘シーンよりいい。もちろん、ビル、そしてエルのキャラクターも強烈で存在感がある。不満があるとすれば、エルが例の口笛を吹いてくれなかったことくらいだ。あれはいい。
 と、まあ多彩な登場人物が居るけれど、ちょっと違う風に見えた一瞬があった。ユマ・サーマンの顔が、なんかクエンティン・タランティーノその人に見えたのだ。そうだ、そうなんだ、「パーマー・エルドリッチ」のように、登場人物はみんなタランティーノだ。そう思ってしまうと、もうそういう風にしか見えない。キルビルタランティーノの脳みそをパカッと開けて、それをフィルムに焼きつけたような作品。そういうものなのだ、きっと。それじゃあ監督のオナニーじゃないかということにもなるけど、それが面白ければそれでいいのだ。
 というわけで、観る前は前編と間隔が開いたことに危惧したけれど、かえって開けておいてよかったんじゃないかと思った一作だった。もし前編と後編、どちらのDVDが欲しいかと言われたら、ちょっと迷って後編を選ぶだろう。けど、前編を観た直後だったら、答えは逆かもしれない。まあ、そんなところだ。