映画『ガープの世界』

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 映画『ガープの世界』の主演は、トム・ハンクスである。俺はそう信じていた。これは、『ガープ』と『ガンプ』の誤解である可能性が高い。高いというか、それ以外にない思う。小説を読む際も、頭の中でガープはトム・ハンクスだった。トム・ハンクスはとてもいい演技をしてくれた。映画『ガープの世界』の主演は、ロビン・ウィリアムスである。
 さて、映画版『ガープの世界』。小説を先に読んでいるから、小説との対比となってしまうのは仕方ない。記憶は消せないのだから。そして、そういう観点から見ると、かなり駆け足ながら、ずいぶん忠実にやってるな、という印象。これは『ホテル・ニューハンプシャー』に感じたのと同じ印象だ。ジョン・アーヴィングの原作は長く密度が高い。一方で映画らしさがあるのでそうなるのだろうか。
 小説と映画で、ストーリー上の一番の違いは、ウィーン行きがばっさりカットされているところだ。それに、ガープの小説の内容にも踏み込まないで済ましている。これはうまいことやったな、と思う。
 もちろん、単に駆け足なわけではなく、映画独自の要素もある。主人公のガープの「飛ぶこと」に対する思いなんかは最たる例だろう。その要素をところどころ(母がヘリで飛び去るシーンは印象的)、そしてラストにまでちりばめていたりする。あるいは、家に軽飛行機が突っ込んでくるシーンも、映画らしくてよかったな。
 それに登場人物。ジェニーにロバータと、実にしっくり来ていた。それに、妻役のヘレンの人が素敵だったな。あと、一瞬の登場ながら、エレン本人もよかった。なんかよかったよかったばかりになってしまったが、まあ、そんなところ。
 ただ、駆け足は駆け足で、はたして原作を知らないで見たら、どこまで分かっただろうか、と思わなくもない。プーの行動なんかについても、イマイチわからんところもあるだろうし(原作でもちょいと唐突だったかもしれんけど)。今度は同じ監督の『スローターハウス5』でも見てみようかな。