本日、当社において多少の難ある交渉をするにあたり、送付文章を執筆することの任を奉じる次第となりました。かくなる上は凡愚の持てうる力を残るところなく絞り出し、当社の意を先方に伝えるところの言葉を書き記した次第であります。
ところが、本件愚稿を上司などに見せましたところ、「時代小説のようだ」「この会社には何歳の老人がいるのか」などの痛罵を浴びることとなり、内心忸怩たる思いをするばかりでした。かような事態を引き起こす要因は、私がこの生涯におきまして一切の正式社員教育を受けることなく、また、就職活動はおろか履歴書すら書いたことがないという、現代社会に於ける欠格者の悲哀と無能と言うより他ありません。フォーマルで尚かつ同時代的な文章を如何にして修得しうるのか、全く途方に暮れるばかりです。
