映画『ラストサムライ』(の後半)

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 小雪トム・クルーズに甲冑を着せるあたりから見た。要するに、合戦シーンはしっかりと見たのだ。見た感想は、「戦国自衛隊ならぬ、戦国明治政府軍って感じだな」。けれど、これがあながちありえなかった話ではないのかもしれない。どこだ、どのあたりだ。蛤御門の変あたりか? 薩英戦争なんてのはどうだったんだ。あれは砲撃戦か……と、まあ、やはりかなり限られたシチュエーションになる。なぜって、リアルなラスト・サムライたちは近代化の道を選んどったからね。思い出してごらんなさい、洋装の土方歳三を。それに、西南戦争だって、だって、えーと、あれはあんまり近代化していなかったかしらん。桐野利秋、とか思い浮かべれば、なんとなく鎧兜に日本刀、熊本鎮台なんて鎧袖一触にしもんそ、とか言ってそう。でも、越すに越されぬ田原坂名物といえば、空中でぶつかり合ってくっついたとかいう銃弾。たしか、人類の歴史上で最高の銃弾密度。互いに撃ち合わなきゃそうはならない。でも、示現流対官軍抜刀隊は白刃きらめく白兵戦だったか。抜刀隊の歌は名曲だよな。敵をもたたえる軍歌ってのはなかなかいい。しかし、こんときの官軍は谷干城など補給線を大切にしたものだが、いつから「輜重輸卒が兵ならば……」になってしまったのだろう?
 ……って、どんどん映画から遠くなってしまった。まあ、とにかくはっきりした説明はできないが、なんとなくの違和感、風景がどうにも日本には見えないとか、鎧兜の装束だとか、あの幟とかなんかお祭りみたいだとか、そんな土下座はねえだろう、とか。でも、でも、ともかく迫力は見事じゃないか。この泥臭い、血腥い合戦っぷりの迫力は見事だ。やっぱこのあたりはハリウッドじゃって思うわ。
 でも、トム・クルーズ生き残ったかね。それは意外だったわ。どうしてもハッピーエンドなのですか。せめて「戦場で行方不明→遺品の刀と手紙が陛下に届けられる→‘その後の彼を知るものはいない……’のモノローグ→誰かが来たことに顔を上げる小雪→THE END」くらいでいいじゃないですか、とか。
 そういえば、中村七之助明治天皇役ははまっていたように思える。ベースに公家顔の上品さがあるけれど、意志の強さがあって(とはいえ、明治天皇が日本統一を夢見ていたかどうかは知らない)、なおかつ若さと迷いがある。しばらく誰かわからなかったのは、『真夜中の弥次さん喜多さん』の印象が強いからであろう。そういえば、手旗信号の印象強い真田広之、俺の見た範囲では舞うか戦うかで、台詞は聞けなかったように思う。
 えーと、そういうわけで、せっかくトム・クルーズが日本語喋ってるんだから、吹き替え使わなきゃいいのにって思った。あ、それじゃあ英語喋ってるときと声変わっちゃうからだめか。だったら、日曜洋画劇場でクルーズ呼んで、アフレコさせろや。無理ですか。サヨナラ、サヨナラ、……って今の中高生、いや、中学生? は淀川長治なんて知らないのかもしれない。