大日如来、海を渡らず

鎌倉彫刻の巨匠運慶作と見られる大日如来座像(個人所蔵)の競売が18日、ニューヨークの競売会社クリスティーズで行われ、日本の百貨店大手の三越が1437万7000ドル(約14億3700万円)で落札した。手数料などを除いた、いわゆるハンマープライスは1280万ドル(約12億7800万円)だった。

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080319-OYT1T00161.htm?from=main4

 ある国の貴重な文化財はその国が保有するのが適当かとも思うが、個人蔵のものをどこまで国が指定してその流通を妨げられるかという問題もあって、より貴重なものをより貴重だと思う人間が形(金)であらわして取得することにも道理に外れるとは思えない。また、公開を前提として美術館などが取得するのであれば、芸術が世界に行き渡る意味で望ましい部分がないわけではないように思う。コレクターによる蒐集についても、国内評価が高くないもの、本国では保存されたかどうかわからないものが、異国の人の手によって価値が見出され、命脈を保ち再評価を受けることもあるだろう。当然そこには国家間の経済格差を使った掠奪に近い場合もあるだろうし、なにかのどさくさで本当に掠奪したのを返さない、などというケースもあるだろう。俺としては、世界のどこかでちゃんと保存されるならば、どこでもいいじゃねえかという気はする。
 それに、日本人だってゴッホの「ひまわり」のケースがあるし。
wikipedia:ひまわり (絵画)

この「ひまわり」について、購入者が「死んだら棺おけに一緒に入れて焼いてくれ」という旨の発言がしたとの都市伝説があるが、そのような発言があったのはゴッホ作「医師ガシェの肖像」を購入した当時大昭和製紙名誉会長の齊藤了英であり、高額購入されたゴッホ作ということで勘違いされているものと思われる。

 はい、勘違いしていました。その齋藤さんのプロフィールを見ると。
wikipedia:齊藤了英

次男は政治家の齊藤斗志二、四男はジーク証券会長兼社長の齊藤四方司。

 はい、ここで見慣れた名前が出てきました。
wikipedia:齊藤四方司

日本中央競馬会の馬主としても有名。

 フジキセキジャングルポケット、しかし俺が思い浮かべる齊藤四方司馬はセリサイトダンディ、ステッペンウルフあたりだ。俺の中ですばらしい馬名をつける馬主というと伊達秀和の名があがるが、二番手グループにはこの齊藤四方司さんの名が出てくる。しかし、同じ証券会社社長なのに、シゲルとは大違いだな。もちろん、どちらもあって馬名の世界は面白い。
 今週、ランスロットルという馬がデビューする。母はゴールデンカラーズ、その母はケンタッキーダービー馬ウイニングカラーズ。アメリカからすれば、貴重な流血(誤った略し方)といえるかもしれない。「サヨナラ、グッバイヘイロー」の例もある。しかし、そういった綾が歴史を織り成していくこともないだろうか。何も、どんどん流出と移動を繰り返せと、それを進めるわけではない。しかし、むやみな禁流出をこわがるのもまたつまらないように思える。だから今回の件、日本の仏教芸術にこれだけの値がついたことをよろこび、また、円高でよかったね、などと思うのである。無理矢理話を戻そうとしたが、なかなか買い戻すのは難しいと実感する。

関連______________________

  • 天台宗開宗1200年記念「最澄と天台の国宝」東京国立博物館id:goldhead:20060417#p1……仏像は好きだがね。
  • 『プライス・コレクション 若沖と江戸絵画』東京国立博物館id:goldhead:20060717#p1……たとえば、伊藤若沖。これを外国人に買いあさられたこと。あるいは多くの日本画、浮世絵。悔しいっちゃ悔しいところもあるけどね。
  • 川崎記念を前に気づいてしまった話id:goldhead:20080130#p1……伊達(元)オーナーの馬、同じ伊達姓の人に名義変更されているね。アンパサンドは伊達泰明名義、シャランジュやトワイライトワルツなどの中央馬は伊達敏明名義に。別に一族ごとどうなるというわけではないのだろうか?
  • ゲルダイノウカイの終わりとシゲルダイハッカイの始まりワンダーランドid:goldhead:20071228#p3……こないだシゲルの馬、超特大の大穴開けてたよな。