俺の隣人たち、そして俺

 昭和の日、昼過ぎ、俺アパートぼんやりDVD見てる。と、ドンドン!とどっかのドアをノックする音。「まさたかちゃん〜! お母さん! 開けて〜」、ドンドン!、「まさちゃ〜ん、お母さん! いるんでしょ〜!?」。まさたかは仮名。思わず覗き穴から外の様子を窺う。年配の男性が前を横切る。お父さん。「電気メーターは回ってるな。おーい! このままじゃ警察呼ぶことになるぞ! ……それとも救急車か」。お母さんは、「まさちゃ〜ん! お母さん、いるんでしょ!? まさちゃ〜ん!」、ドンドン! を繰り返す。
 ……ま、またこういうのですか? 

 去年の11月に、隣人が父親とのトラブルから警察沙汰になって退去したばっかりですよ?
 とか思ってると、お父さん、携帯から電話を始める。料金や身元確認のことなど聞いているので、掛けてる先は警察でも大家でなく鍵屋だろうか。「住所は×××の○○○号室」。はい、逆の隣人です。さんざん騒音トラブルで俺を悩ませてきたおかまのまさたかちゃんです。

 うへぇ。硫化水素自殺でもしたんだろうか? もう聞いているのもいやになって、ヘッドホンしてDVDに戻る。そして、三十分以上、DVD見終えて、外のことすっかり忘れてる俺。ドアに寄っていって外の様子を窺う。お巡りさんや救急車という気配はない。ただ、ぼそぼそと話し声が聞こえる。まさたかちゃんとお母さんだろう。なんだ、死んでいなかったし、大事にもなっていない。両隣の部屋が空くことにはならないようだ……。
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 しかし、まあ、俺はなんというところに住んでいるのだろう。車も入れぬ路地に急遽姿を現す斜面のアパート群、一番上の棟の二階の奥の奥。こんなところを選ぶのは、変なやつ、問題のあるやつしかいない。それがさらに明白になった。俺? 俺も、自分の両親がどこに住んでいるのか知らない、などということはあるけれど、連中ほどじゃねえぜ、まったく。