モロヘイヤのスープ

 ここのところの僕の晩ご飯といえば、だいたい中華スープにいろいろの野菜と冷凍肉団子を入れたもの、と相場が決まっている。昨日は1束100円のモロヘイヤを買ってきて、それを食べるつもりだった。そのモロヘイヤの、ビニールの包装に、「エジプト風スープの作り方」なるレシピがあって、それによると「モロヘイヤを粘り気が出るまで細かく刻む」などとあって、味付けについては中華チキン出汁というのは決まっていたので変えるつもりはなかったのだけれど、「粘り気が出るまで細かく」刻んでみたくなって、大きめの中華包丁でこれでもかと刻んでみたりした。
 中華スープ、肉団子、キャベツ、マロニー、塩と砂糖と胡椒少々、控えめのところ。そこに刻んだモロヘイヤ。2、3分経つと、なるほど片栗粉を入れたようなとろみがついている。味は薬膳的な仕上がりになっていて、基本薄味。これに食卓の上で黒酢や酢などをちょっと加えつつ、ときにはラー油なども入れて変化をつけつついただくのだ。
 雪平鍋をテーブルの上に運び、スープカップ、お箸、お玉を移動させ、テレビをつけると福田康夫首相が会見をしていた。NHKのニュースかと思ったら違うようで、急にドラマの一シーンが挿入されたように見えたが、また会見に戻る。「福田首相辞任」とテロップが出ていた。テレビ東京まで同じ放送をしているので、これもバラエティ番組の一貫かと思い直すもそんなことはなくて、どうもモロヘイヤのスープを作っただけでこんなことになるとは想像もしてなくて困惑する。僕は中華スープにモロヘイヤを刻んで入れただけなのに、何も首相が辞める必要なんてないんじゃないかと思うのだ。本当に僕はただ、ためしにモロヘイヤを刻んで、スープに入れただけなんだって。