おれはクレジットカードをなくした(わらえない)


 なーんか、財布のカード入れのとこがスカスカでさ、一枚キャッシュカードがなぜかスーパーの買い物袋の中に落ちてたこととかあって、「そろそろ財布もくたびれてきたから、替え時かな?」などと暢気なことを思っていたのだけれども、さっき、それとは別のクレジットカード一枚ないことに気づいて俺は涙目になった。
 とりあえず財布を入れるコートやズボンのポケットを探しまくって、部屋も探し、かばんも探し、「あ、そうだ、きっと会社の、パソコンで、なんか買うとき、なんか使ったんだ!」と寒中自転車漕ぎ漕ぎ職場にやってきてきたない机周り探し回ってもないときた。
 で、ネットで利用明細みてえなの見ても、変な利用とかなくて、それでそこにあった紛失・盗難用のフリーダイヤルにダイヤル。
 ……したら、まずテープが「フリーダイヤルにおつなぎします」とか言って、てんてろてろてんてんっ、て保留音楽が流れて、それでまた別のテープが出てきて、「ただいまの時間、たいへん混み合っております。しばらく待っておかけなおしください」とか言うの。え、そうなの? 年中無休24時間対応なのに? そりゃあ年末だけれども、えー? まあ、なんかの偶然だろう……。
 と、一呼吸おき電話しても同じ、ちょっと間を開けて電話しても同じ、「これは神様が『もっとよく探せ』と言ってるに違いない」と信じたふりをして机の周りを探したあとに電話しても同じ。ノドが渇いたのでお中元で届いていたカゴメの100%オレンジジュース飲んだあとに電話しても同じ。それならおまじないだと、携帯電話から掛けてみても同じ。
 ……三十分、三十分も待った。これはきつい。いや、完全に盗難とわかっているようなケースとは比べものにならないかもしれない。いつなくしたかも定かでないからだ。でも、でもだよ、なーんか、これによって不安増幅されるよね。このまま年越しか、と。
 でも、出た、男の人。
あたし「あ、オレオレ、突然カード紛失(TCF)したので」
カード「え、マジ? 財布ごと?」
あたし「いや、一枚だけねえの」
カード「なによ、番号わかる? 山手ってどう漢字で書くの?」
あたし「あのー、山のマウンテンに手のハンド、つーか、山手線の山手だよ!」
カード「じゃあ、警察に出頭しておいてください。停止したから安心しとけ」
あたし「あ−、あのさー、今利用してて、まだ落ちてない分とかどうなんの?」
カード「はぁ? なにいってんの? ほっときゃ普通に処理されんから」
あたし「それじゃ、警察の受理番号は連絡すんの?」
カード「それもさ、こっちで再発行審査すんときによ、おまえが怪しくねえか問い合わせたりすんのに使うの」
あたし「あ、ああそうなのね、えーと、じゃあ、バハハーイ」
カード「ハイハイ、バハハーイ」ガチャ
……
………と、いうようなやりとりを丁寧語でしたというわけ。それで、次に警察署に電話(110番じゃないよ)して、クレカ紛失したむねを申し述べたら、「書類に書いてもらわなきゃいけないから、交番か署にご足労ねがいたい。でも、交番はいないこと多いから、署に来いや」とのお達し。
 というわけで、俺はまた自転車漕ぎ漕ぎ夜の街、そこかあそこの警察署に行く。で、ひょっとしたらお気づきの方おられるかもしれないが、まあ、これも人生経験というかイベントというか、そんな風にテンションあがってる俺なのさ。いかに刺激のない人生を送っていることか。それじゃあ、バハハーイ。