小松左京『虚無回廊』I,II を読む

虚無回廊〈1〉 (ハルキ文庫) 虚無回廊〈2〉 (ハルキ文庫)
 女が部屋を片づける(その理由はおもしろくないので書きたくない)というので、のこのこ出かけていって、捨てるか捨てないかという本、捨てるつもりはない本を、恵んでもらったというか、借りたというか。
 その中にあったのが小松左京の『虚無回廊』の1と2。俺は日本人作家によるSFにうとく(ハヤカワと創元社のは背表紙の色で見分けがつくけど、日本のはどこのなんだかわからない、という理由で)、小松左京を読むのはじめて。印象としては、テレビでちらっと見かけた映画『日本沈没』。あとは、‘宇宙セックス’や‘違うよ。全然違うよ’の『さよならジュピター』原作。
 ちょっと舐めてかかっていたところがある。それは認めなくてはならん。しかし、どうだこの設定。

“SS”―宇宙空間に突如出現した謎の物体。真径一・二光年、長さ二光年という、人類の技術をはるかに超えた存在を、一体何者が何のためにつくり上げたのか?AE(人工実存)の研究者・遠藤を中心とした探査計画は、AE・HE2によるSSとのコンタクトをはかる。

 脳裡に飛んでくるのは宇宙セックスどころか『宇宙のランデヴー』。巨大構造体といえば『リングワールド』。人工実存はサイバーパンクであり、宇宙を行くディクシー・フラットライン、『ターミナル・エクスペリエンス』、あるいは『女王天使』。
 なにはともあれ第一に、ハード。かちかちにハード。俺は算数できない、理科知らないのにハードSFが好きなんだ。そしてこの『虚無回廊』は、それに応えてくれる代物。どこかしら予想していたぬるさなんてものはなかった。漠然と抱いていた日本の大御所SFのイメージはなかった。実にのめりこんで、読んで、読んで、昨日も深夜二時に起きて、その後眠れず、一気に読み切ったのだ。IIの最後まで。
 最後まで読んで、唖然とした。残りページ数と話の展開。いったいどう終わるのか想像がつかない。つかないままに、整理できないままに、ぽつんと取り残される、そんな読後感。『虚無への供物』どころじゃない。なんなんだこれは、これでいいのかと、半ばパニック。
 が、ここですぐに端末にアクセスするのが21世紀おっさん。……ああ、なんだ、IIIがある。あって当然だ。いや、よかった。
 俺は昼休み、イセザキモールまで行った。ブックオフでIIIを買うため。もう狙いは解っている。作者名も、出版社も。が、ないのだ。IとIIもない。あるのは『日本沈没』ばかり。しかたなく俺は、仏教本(『鈴木大拙とは誰か』)を一冊買って店を出た。次の目的は、もうちょっと奥の方の古本屋。あそこにはSFが多い。
 が、ないのだ。いや、あったのだ、店は。ただ、シャッターがしまっていた。この昼間に。そうなのか? 休日にしか来たことがないのでわからない。ひょっとして、店とじてしまったの? これには呆然とする。その後、食器屋の二階の古本屋に寄ろうかとも思った(ここには小説の類などなく、買うなら仏教絡みの本となる)が、それは押しとどめて戻る。

虚無回廊〈3〉 (ハルキ文庫)

虚無回廊〈3〉 (ハルキ文庫)

 しらべると、2008年10月発行。最近出たのか。ひょっとすると、有隣堂が正解。でも、俺が借りたのは徳間書店のもの。復刊だろうかなんだろうか。貸し主に聞いたら、考えてみたら読んでいないかも知れない、とのこと。俺はさっそくAmazonのボタンを押した。すぐにこい虚無、今すぐ来い、虚無回廊……。

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