黒髪受難〜文化と装飾〜

今日電車で前に立ってた女の子がすごい可愛かったんだけど、「今どき髪が黒いってだけでおかしな男の人に狙われるから、無難に染めておきなさい」とお母さんにお金を渡された、という話を友達らしき子としていた。

http://twitter.com/motyli/status/3354871750

かつては女性が茶髪にしただけで不良扱いされた時代もありましたが、今やもう髪を染めるのなんてオシャレの基本。でも、一方で女性アイドルや声優が髪を染めた際に、ネット上でファンから残念がられることもあるようです。黒い髪に「清楚」や「おとなしそう」などの好印象を抱き、反対に茶髪や金髪などに良い印象を抱かない男性は少なくないのかもしれません。

今や女性は髪を染めないと危険!? Twitterのつぶやきが話題 - はてなニュース

 
 わーい(^○^)! 赤っぽく髪染めててよかったー! おまけにピアスまでしてるー! おれ、三十のおっさんだけどー!

 身体加工といえばいかにも野蛮だが、それこそが文明のはじまりなのだ。誰も動物を野蛮とはいわない。野蛮は文明のはじまりなのであり、おそらく、文明もまた一種の野蛮のはじまりなのである。
―『身体の零度』三浦雅士

 ……でも、なんだ、昔、中学のころに、担任の教師が言ってたこと思い出すなー。「不良に絡まれやすいのは、なんかちょっと髪染めてたり、ちゃらちゃらしてるようなやつだ。ガリ勉みたいのには絡まないのだ」と。たしか、「俺は昔ワルだった、バンドやって大麻とか吸ってた」とかいうような教師だったから、その悪自慢が本当かどうかは別として、絡む側からの視線だったかなー?
 で、それ、頭よぎったんだけれども、なんつーか、上の例では、一見逆だよなーって。でも、その実、えーと、うーん? 一緒? 一緒だろか?
 「ヤンキーはヤンキー(傾向のあるやつ)を狙う」、「おかしな男はおかしな男(傾向のあるやつ)を狙う」……なんかちげーし。違うわ。うーん、「黒髮のおかしな男は、黒髮の女を狙う」……いや、「おかしな男」の髪の色しらねーし。
 つーか、「おかしな男」ってなんだろね? 俺はね、最初はもう単純に、痴漢と思ったんよ。この場合の黒髮は、おとなしさの記号じゃねえかって。でも、なんかブックマークコメントとか読んでると、「オタク」とかいうような読み方もあって、よくわかんねーや。
 ……まーいいや、あーやっぱり、一見逆じゃなくて、逆だなーと、そうしておこーっと。そうだ、ヤンキーが、漫画やドラマの中みたいに、なんかくそ真面目なやつを狙うんだったら、ヤンキーに擬態するのが戦略的に有効だけど、女性対痴漢の場合は、えーと、擬態? 何に? よくわかんねー。茶髪の女の人は、すげー痴漢に対して積極的に反撃するって、そういうあたりの、えーと、了解? コンセンサスみてえな? そんなんあるんかなー? わかんねーけど、納得できるかできないかでいえば、ちょっと納得できてしまうかもー。

 個人の意図的な行為はとりあえず措くとして、社会的な出来事のほとんどは、その原因が後から発見される。つまり説明されるのである。だが、その説明、またその説明によって示される原因でさえも、たぐってゆけば深淵のなかに消える。どのような出来事にもほんとうは理由などないのではないか。そう思うと、無意味で無根拠な世界という暗闇を無限に落下していくような恐怖を覚える。だが、言葉はあくまで理由を、意味を求めるのだ。人間はなぜ現代においても身体を加工しようとするのか。
―『身体の零度』三浦雅士

 そういや、俺が髪染めたのは……大学、いや、大学ドロッパウトしたあたりだったっけー? 逆に大人になってから髪を染めて、そんで、働き始めてからピアス開けた−。なんだー? なんかわかんねーけど、逆コース? ともかく、中学高校時代は、真っ黒サラサラヘアに、いけてないメガネで、さかんにパチンコ屋の二階のゲーセンとかに立ち寄って、まー健全に対戦台や脱マーに入れ込んでたんだけど、ほとんどっつーか、一回あったかなかったというていどしか絡まれたことねーし、一緒にいた連中がごつかったせいもあるかもしんねーけどさー。
 そんで、大人になって、また一回も、なんか絡まれたり、職質されたりしたこともねーし、宗教の勧誘とかへんな商法とかに声かけられたこともねーし、なんかこれでうまく行ってるかなーって。でもさー、ひょっとして、俺、ステルスモモなんじゃね? という可能性とかあったりさー。すげー影薄いかも。まあいいや。
 しかしよー、なんつーか、髪の色かえたり、ピアスしたりすんのは楽しいわなー。なんか、そこまでって思うけど、正直、タトゥーとか入れたいって思うことあるよ、俺ー。ヌルオタの冴えないクロス乗りがよー? なんでだろーねー? つーか、モテてー。

 むろん、現代人も化粧もすれば衣服も身につける。耳にはピアスをし、髪を切っては熱処理まで加工する。睫にマスカラを付けもすれば、爪を切ってエナメルを塗りもするのである。刺青をする人間もいれば、整形手術をして若さを保とうとするものもいる。しかも、必ずしも美容上、健康上の理由によってというわけではない。潜在的には、装身具の多くは、いまなお呪術的な力を持つとみなされるといっていい。
 にもかかわらず、人間の身体とは何かと問われれば、人は一般に「裸で何も塗らず、形を変えず、飾らない人間の身体」であると答えるだろう。それが現代人の人間の身体についてのイメージであるといっていい。医師の視線にさらされた身体がそれであり、病気も異常も、そのイメージとしての身体からの隔たり、変異として捉えられているのである。
 だが、そのような身体を、標準的な人間の身体であると見なすようになったのは、「きわめて後世の、一般的ではない文化的成果」としてなのだ。
―『身体の零度』三浦雅士

 まー、しかしさー、なんかこのさー、「今どき髪が黒いってだけでおかしな男の人に狙われるから、無難に染めておきなさい」ってのの面白さ(興味深さ?)ってのはさー、なんか、装飾、身体加工の意味っつーのか、そのあたりが、一回転してさらに、みてえな、そんなところの違和っつーか、そんなんがあるところかなー? 
 あー、たとえば、別にそうする必要もねーのに、髪を染めたりする? って、それはまあ、うーん、「黒髮=自然体」というまなざし? みてーなもんからの自由っていうか、そういうところがあってさー、いや、ただのファッションってのも、そういうもんがあると俺は思うんだけど、まーそんで、「自分は大ふへんものですよ」って、かぶいてみせて、みてえのがあったんだろうけど、それが一般化しすぎて? 逆に、黒髮であることが? 異常に? いや、黒髮自体とかそーゆんじゃなくて、黒髮へのまなざしが? おかしな? うーん、わかんねーけど。あと、その、ファッションじゃなくて、ファッションが護身で、すくなくともこの文脈では、真面目な? 子を、守ろうとする親心? 的な? 
 あー? よくわかんなくね? つーか、すごい久しぶりに? 『身体の零度』読み始めたところで、すげーって、前に読んだのに、俺、感銘受けたことだけ憶えてて、内容おぼえてねーって思ってるところで、この話題見て、なんか関係あるのかなーって思ったけど、うまくつなげらんねーし、まだ、一章読み終わったところだし、またなんか書くかもしれねーけど、よくわかんねー。おしまい。

追記:なんだろー、自分自身に関していえば、茶髪でいるほうが楽。無難に染めておきなさいつーのは、なんか俺自身に、べつに痴漢とか関係なく、なんか当てはまるところがある。なんというのか、この、街中? そこらへん? 老若男女に対して、「茶髪である人間」を装う? のが、たぶん楽。黒髮から、染めて、そう感じたし、今も感じている。理由はわからんが、とりあえず「今どき」に溶け込めているんじゃないか、というような。よくわかんねーけど、下手すると、というか、けっこう、かなり、俺も、黒髮に対して、なんらかの特別視? みたいなもんがあるのかもしれねー。黒髮の若い男、場合によっては、なんかちょっと「おかしい」というような、くそったれ偏見があるのかも。うーん、それは、俺が暗い青春時代を送り、ひきこもったりしてたとき、てめえの髪が黒かったから? ってのもあるかなー? うーん、わからんけど。でも、その、真面目な、かたい職場に勤めています、って人以外なら、なんか、ちょっとそうなんじゃねえか、みてえなところがあるような気もする。わからんけど。

身体の零度 (講談社選書メチエ)

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