キュウリくらいにフリーダム

 俺はキュウリという野菜にあまり好意を持っていない。だからといって悪意を持っているわけでもない。悪意を持っていないからといって、積極的にスーパーのカゴに放り込むこともなく、一人暮らしをはじめてからあまり買ったことはなかった。
 ここのところ話が違ってきた。ひとつに、大好きなアボカドと相性がよいと気づいたことであり、また、最近の主食である冷しゃぶに合うということである。
 とはいえ、俺はキュウリの表面のイボが嫌いだ。あいつがどうにも嫌いだ。とはいえ、すっかり皮をむいてしまうのもつまらないから、ピーラーでストライプにしたり、包丁でかるく削ったりする。

 今日、スーパーでこんなキュウリを見つけた。とげなしきゅうり(フリーダム)。フリーダム、自由。悪くない。ただ、「浅漬などの漬物が美味しい!」とある。言われてみれば、ピクルス用のキュウリなど、表面がつるつるしているようにも思う。
 いずれにせよ、俺は生で食うのでお門違いだ。しかし、この量でこの値段は魅力でもある。と、よく見れば上にこう書いてあるではないか。
 「サラダでも構いません!」
 「構いません!」と。これをどう評価するべきなのだろうか。浅漬向きだが、サラダでも……構いません。サラダでも美味しい! とは言い切らぬ。とはいえ、まずいわけでもないのだろう。「構いません!」なのだから。俺は、このキュウリを買った。


 まな板の上のキュウリ。このまな板は刑務所で買ったものだ。包丁は自慢の一竿子忠綱。俺はよく切れる包丁で野菜を切るのが好きだ。俺は俺のために料理をするのが好きだ。これが誰かのための料理だったら、俺はうんざりしてしまう。俺は万事そういうところのある人間だ。俺の『孤独のグルメ』というのは、つまるところ自炊自食。なんというか、自由で、救われてなくちゃ……。


 つるりとしたキュウリのつるりとした断面。フリーダムもリバティもぼんやり一緒くたの日本人に、俺に、自由なんてものがあるんだろうか?


 キュウリと水菜、アボカド、トマト、豚肉。ハウスの冷しゃぶドレッシング(ごまみそ)に、桃屋の辛そうで辛くない少し辛いラー油。場合によっては、この上にケロッグの玄米フレーク、かいわれ大根
 そういえば、こないだ本牧のオーケーで、赤い茎のかいわれ大根を見かけて買って食ったんだった。俺はそういう野菜が好きだ。
 そうだ、フリーダムの味を書いておかなければいけないか。まあ、俺にはよくわからないな。サラダでも構わないと思うけどね。

関連★★★
http://www.sakataseed.co.jp/special/freedom/サカタのタネ
↑……「生でバリバリ食べてみて!」って書いてある!