※ネタバレあります
wikipedia:ピンクフラミンゴ
昔、まだレンタルビデオがVHSのころの話なんだけれども、ちょっと古いアメリカ映画を借りるとね、よく『ピンクフラミンゴ』の宣伝が入っていたんだ。なんか、借りるビデオ、借りるビデオ、全部に入ってたような気がする。内容はよくわからなかったが、なんらかのキワモノじゃないかと、そんな風に想像していたっけ。なんとなく、タイトルなんかから思い浮かぶイメージは、奇妙なミュージカル映画とか、そんな感じ。こないだ観た、『ロッキー・ホラー・ショー』みたいなイメージかな。
それで、ようやくDVDで観てみたんだけれども、想像していたものとはまるで違ったね。この映画で観られるものを挙げれば「アナルをパクパクさせて歌うふりをする芸」、「ニワトリを混ぜた3P(ニワトリは死ぬ)」、露出趣味、監禁、強姦、近親相姦、カニバリズムその他いろいろ。主人公たちはトレーラーハウスに住んでいる。『ロッキー・ホラー・ショー』みたいな華やかさなんてないんだな。まるまる太った祖母は卵をむしゃむしゃ食う知的障害。ライバルのお下劣夫婦は、地下にさらってきた女を監禁していて、召使いの種付け男に種付けさせて、生まれた子供を売る商売をしている。主人公一家はこの夫婦の家に押し入り、床や家具を舐め尽くす。やがて一家は夫婦を捉え、公開裁判ののちに公開処刑する。
いや、いっておくけれど、僕はエロとナンセンスは好きかも知れないが、グロは苦手なんだな。飯を食いながら観ていて、ちょっとこれはアカンって思ったよ。アニメの『パンティ&ストッキング』レベルのうんこ・ゲロネタですら、ちょっとひくくらいだもの。まあ、それでも観るんだけれども。
でもね、この映画一番のショックは、やっぱりラストだろう。Wikipediaにも書いてあることだからバラしてしまうけれども、パッケージにも映ってる巨漢の女装俳優が、犬の糞を食うんだ。小型犬がぽろぽろ歩道に糞をしたばかりのできたてホヤホヤを、拾いあげてむしゃむしゃ食うんだ。これには本気でオエってなったな、えずくとかいうのだっけ、ともかく、オエッ、オエッ、オエッってなった。シーンとしては、殺人シーンだのなんだのの方が衝撃なはずなんだけれども、これには参った。もちろん、いまどき企画物のAV女優の方がすごいことやらされてると思うし、犬の糞を食うくらいゴールデンタイムのバラエティ番組の罰ゲームでやらされてるレベルかもしれない。でも、なんというのだろう、これはちょっとすごかったな。
それで、エンド・タイトルのあと、DVDのおまけ的に、監督のジョン・ウォーターズが出てきて、未公開シーンとかちょっと流したりすんの。「獣姦でニワトリを殺すことを愛護団体は非難するが、食肉も自然死ではないですよね」とかいって、カットされたその鶏肉を食うシーンとか流したりね。まあ、このころから「スタッフがおいしくいただきました」だな。
でね、最後に予告編を紹介するんだな。監督曰く、本編の映像を一切使っていないところがミソです、って言うの。それがどんなのかというと、試写会から出てきた観客のインタビューのつなぎ合わせ。「これは必見だね!」とか、「これは最低だよ! アメリカのケツの穴をしっかり描いてる!」とかね。まあなんだ、最近のテレビで観る映画の宣伝とまったく同じと思っていい。それが、なんというかね、この悪趣味、グロテスクさを、それを受け容れられるセンスのあたし、おれ、そんなものを見せられているようで、これもある意味、強烈に悪趣味だよな、と。それで、もちろん、それをこうやってしたり顔で書いてる俺にも降りかかってくるものなのだし、まったく、ともかく、うんざりするにはもってこいの映画だと思ったな。
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