『チェンジリング』〜取り違え以前の問題〜

チェンジリング [DVD]
※ネタバレあるかも

【ストーリー】
1928年。ロサンゼルスの郊外で、9歳の息子・ウォルターと幸せな毎日を送る、シングル・マザーのクリスティン。だがある日突然、クリスティンの勤務中に、家で留守番をしていたウォルターが失踪。誘拐か家出か分からないまま、行方不明の状態が続き、クリスティンは眠れない夜を過ごす。そして5か月後。警察から息子が発見されたとの朗報を聞き、クリスティンは念願の再会を果たす。だが、彼女の前に現れたのは、最愛のウォルターではなく、彼によく似た、見知らぬ少年だった――。

 クリント・イーストウッド作品。事前知識はほとんど無しに見はじめた。結論から言うと、これは映画館で観なくてよかった。なぜならば、「彼女の前に現れたの」が、元の少年と同じガキか違うガキかわからなかったからだ。
 俺は、人の顔を覚えるのが苦手なのだ。くそ、日本人の顔も見分けられないのに、白人のガキの見分けがつくかよ!
 もう、ぜんぜんね。でも、そこって、この作品の展開の上での肝。そのガキが元のガキと同じで、母親が変なことを言ってるのか、元と違うガキで、母親が正しいのか。予備知識がないから、前者の可能性も否定できない。だから、俺は躊躇せず巻き戻して(DVDの操作でもこう言うのかな?)、元のガキのシーンを見た。見て、目に焼き付けて、再会シーンに戻る。あれ、わからない。これを三度くらいやった。ついに不屈の俺はiPhoneで画面を撮影した。文明の利器、知恵の勝利。が、それで見比べても、俺にはわからなかった。iPhoneと画面を並べて見ても、同じような気もするし、違うような気もする……。
 まあ、しばらく見ていると、決定的な事実みたいなものが提示されるんだけれども、それでも俺は半信半疑だったというか。むしろ、敵役のL.A.P.D.寄りに見ていたかもしれない。でも、やっぱりその決定的な部分ねネタバレありって書いたから書くし、上のあらすじだけでも出てくる発想だと思うけど「学校の先生やクラスメートがいるじゃん!」って。いや、そのシーンがぜんぜん出てこないので、なにかもう、SF的な世界トリックものかと思ったくらいだ。でも、トゥルーストーリーなんだよ。まあ、結果として事実が明らかになっていくわけだけれども。
 まったく、予備知識はありすぎてもつまらないが、なくて困ることはある。あと、やっぱり少しくらい人の顔を見分けられた方がいい。
 というわけで、なにやら映画以前のところでつっかえたところがあって残念。話としてはね、冒頭で、「あなたのお父さんは、あなたが生まれたときに届いた小箱の中を見て逃げ出した。その箱には‘責任’が入っていた」みてえなこと言ったりしていてね。まあ、L.A.P.D.の面々にしても、事件に巻き込まれた少年たちにしても、responsibilityを巡る物語だ、と言えるかもしれない。違うかもしれない。あるいは、父親不在、アメリカの歴史における父、あるいは女性の話、そんなところがあるのかな。ないのかもしれない。
 あと、なんというか、話がスパッと終わらない。クライマックス→エンド、みたいな感じではない。「いつまで続くのか」と、つまらないから言ってるわけでなく、そんな感じで話は続く。そのあたりがいい。それでも人生という名の物語は続く、のだ。
 最後に、主演女優がどこか大竹しのぶみたいでいいなって思ってて、エンディングで名前確認しようとしたら、アンジェリーナ・ジョリーだった。なんだよ、『17歳のカルテ』じゃねえかよ! まったく、人の顔ってどうやったら覚えられるんだ?

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