空からなにが降ってくるのか?


 君はまたローカル線に乗る。伊豆箱根鉄道大雄山線。君は「空が嘘みたいに青かったんだぜ」と言うが、それは嘘だ。

 君は坂道を登り、見晴らしのいい公園に向かう。

 君はバドミントンをして遊ぶわけでもなく、業者としてほかの家族連れやボーイ・スカウトの気にしないものを見る。

 君は「デラックスこゆるぎ弁当」を食べる。君は「こゆるぎ」の名を見て小動岬を思って買ったが、その「こゆるぎ」ではないと知ってすこし落胆する。

 君は池のほとりで妙な鳴き声を聴く。妙な声ではあったが、カモの声だ。「かもさん、かもーっす」とつぶやいてもカモは応じない。

 君は単焦点マクロレンズの世界に入ろうとする。

 君は単焦点マクロレンズの世界に入った気になる。

 君は単焦点マクロレンズの世界に入って帰りたくないと思う。

 君はヒスイカズラから一文字取り去るだけでスイカズラになってしまうことに気づく。

 君はこれを天使にたとえたくなるが、これを天使とするとなにが天使といえるのかわからなくなる。すくなくとも流氷の天使クリオネは、ほどよく天使ではないからだ。

 君は水滴を撮ろうとして近づく。かといって濡れる度胸のある人間でもない。

 君は赤と白に咲き分けるものがあれば「源平」の名がつくと知る。

 君は温室から出ると太陽の光に誘われてふらふらと歩き出す。

 君は麦畑を見る。

 君は麦畑を見ると、『麦と兵隊』を歌いだす癖がある。

 君は麦畑を見たので、『麦と兵隊』を歌いだしてしまった。

 君は徐州が居よいのか住みよいのか知らない。徐州の場所すら知らない。

 君は麦でもなければ兵隊でもない。この世界が居よいのか住みよいのかも知らない。

 君は麦になりたいとも、兵隊になりたいとも思わない。

 小田原市の小田原地区茶業運営委員会は13日午後、JAかながわ西湘久野支店で役員会を開いて対応を協議。新茶の刈り取りと出荷をやめ、つみ取った新茶については、処分方法の指示が出るまで保管することを決めた。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kanagawa/news/20110514-OYT8T00070.htm


 君は足元にまとわりつく蝶に気づく。

 君は空からなにが降っているのか。