島田紳助の引退会見を見ていて思いだしたヤクザのやり口

※本文中一部読みにくい箇所がありますが、著者の意向による仕様です。

まず、十数年前なんですけど、僕の解決できないトラブルがありまして。自分自身、芸能界を去ろうと決意しました。そのとき、昔からの友人であるAさんなんですけど、Aさんとも数年に1回、会うペースだったのですが、Aさんが自宅に電話してくれた。Aさんに話したら、Aさんはやくざ組織のBさんにその話をして、僕の悩みを解決していただいた。正直言いまして、人として重みを感じました。Bさんは「お前は芸能界の人間、おれは組織の人間。その人間が会うと君にはマイナスだ。テレビの世界で頑張ることが恩返しになるのだから、お前とは会わずに頑張ってくれ」。人間として、ありがたい言葉だと思いました。「心と心がつながっていればいい」と言われて感謝しました。

http://www.asahi.com/showbiz/nikkan/NIK201108230219.html


 島田紳助の引退会見で、問題となった「組織」の人とのつきあいについてである。直接の依頼なしに「不条理と感じたから」という理由でトラブルを勝手に解決し、「お金もいらないし、恩義を感じる必要はない」などと紳助に言うわけだ。それに対して、ステキシンスケクンすごい恩義を感じている、という筋書きである。
 事の真偽は知らんし、知りようもない。ただ、そこで語られたこのエピソード、いかにもヤクザのやり方だというそういう印象を受けた。いや、印象を受けたというより、思い出した、といっていい。
 話はしばらく昔のことになるが、実家を急いで処分しなくてはならなくなったときのことである。夜逃げとは言わぬが、遠くもない。その際、親戚の\アッカリ〜ン/から紹介されたのが、\アッカリ〜ン/の不動産屋だったのだが、この不動産屋は実は\アッカリ〜ン/だったのである。おれは彼を頼ることについて、母に強硬に反対したのだが、実際に会って話をした母はすっかり信頼していたようで、結局\アッカリ〜ン/にことを任せたのである。結果として、わが家が損をしたということはなかったと思う。そしてまた、\アッカリ〜ン/から大きな見返りを要求されることもなかったのである。
 ただ、それからしばらく経ったころのことである。\アッカリ〜ン/\アッカリ〜ン/\アッカリ〜ン/だという人物を紹介したいと言ってきたのである。恩があるので会ってみたところ、\アッカリ〜ン/\アッカリ〜ン/する、決して悪い話ではない、という。ただ、それはもうどう考えても法的に\アッカリ〜ン/な話であって、母は丁重にお断りしたという。最初に紹介してくれた親戚が\アッカリ〜ン/であることもあって、その後なにか連絡があるというわけでもなかく、結局わが家は\アッカリ〜ン/\アッカリ〜ン/から\アッカリ〜ン/を受けて勝ち逃げというところである。まあ、親身になって合法的に仕事をしてくれただけであって、なにも負かせたわけではないのだが。
 しかしまあ、この話のミソは、やはり最初の家と土地の処分については、そこで目先の銭を取ろうとせず、信頼やら恩義を取ろうとしたところにあるのだと思う。むろん、\アッカリ〜ン/の親戚であるということや、\アッカリ〜ン/\アッカリ〜ン/をしていたという、将来使えるかも知れない要素をこちらが持っていたのが大きく、それがなければ目先の銭を取るか、相手にしなかっただろう。おれはその\アッカリ〜ン/のやり口をたいしたものだと思ったし、また\アッカリ〜ン/\アッカリ〜ン/に深く食い込んでいるところに、この社会の闇を見たような気もしたのである。ただ、その\アッカリ〜ン/によっておれがいくらか助けられた部分もあるわけで、やはりその点に負い目のようななにかがあるというのは否めない。
 と、いうわけで、紳助の会見からそんな記憶が甦ったのである。
 ただ、どうだろうか、こんなヤクザのやり口は、常識とは言わないまでも、べつになにか体験していないところで、いかにもな話ではある。『暴力団に学ぶコミュニケーション術』みたいな新書(あるのか知らんが)を読まなくても、だいたいありがちな話である。で、紳助のように頭の切れる人間が、果たして「いかにもヤクザにありがちな話」を単なる美談のようななにかとして、あの場で語るだろうか。その後の関係があろうがなかろうが、あれは単にヤクザの話に他ならないはずだ。ヤクザのイメージアップに協力しようという姿勢を見せなくてはならなかったのか? よくわからない。それとも、その筋書きが一種の美談、義理と人情のようななにかとして世間が飲み込んでくれるという判断があるのだろうか。ひょっとしたら、飲み込んでしまうのだろうか。飲み込んだ先になにがるのか、さてよくわからない。島田議員だの島田知事だのが生まれたところで、あまりおれも驚かないような気はするが。
 ああ、しかし、紳助か。おれは徳光が24時間テレビで走ると聞いて、なにせあれはもうおれが小さなころから嫌悪してやまない読売巨人報道の権化のような人間だから、\アッカリ〜ン/\アッカリ〜ン/になったりしないものかと思っていたわけだが、そこに出ていた紳助がね。いや、おれは島田紳助をどう思っていたのかな。最近の、とくに暴力事件のあとの紳助はまったく見たくなくなっていた。積極的にチャンネルを変える対象だ。でも、それより昔の「行列のできる法律相談所」でまだ法律の話をしていたころ(最近しているのかどうかもしらんが)やら、あと、「なんでも鑑定団」に、TBSの「オールスター感謝祭」なんかに悪印象はあまりない。「松紳」とかもだ。それよりさらにさかのぼった、漫才というのは、世代も違ってまったく知らない。変わったのは紳助か、俺か。まあ、まったくどうでもいいか、おしまい。