襲名アルヒーフ、あるいは消えた三遊亭楽太郎の謎について

 中村勘太郎改め六代目中村勘九郎襲名披露の「二月大歌舞伎」が2日、東京・新橋演舞場で初日を迎えた。

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●この話題をワイドショーで見て思い浮かんだことなど。灰皿テキーラ以外に歌舞伎のことはまったく知らない。
●襲名のことである。10年、20年、30年と生きていると、テレビなどで見ていた芸能人、有名人の訃報というものに接する機会が増えていく。それほどでないにせよ、襲名というやつも増えていく。
●昨日までこぶ平だったのに、それが正蔵になったりする。ピンとこない。
●なにより、もう名前が変わりそうにないように見えていた、というか永久不滅に固定されているんじゃないかと思っていた笑点メンバーの名前が変わるというのには、わりかし驚いた。
三遊亭楽太郎が円楽になってしまうのか、と。
●この違和感の源はといえば、本名と俺の一対一の関係みたいなところがあるのだろうか。結婚や養子入りとかで変わることもあるけど。
wikipedia:人名の「日本人の名前の歴史的変遷」とか読むと、明治以降の近代的な意識か。
●鎌倉にいたころ、軽トラックで豆腐を売りに来る豆腐屋さんは、代々下の名前を「○×右衛門」みたいにしていたと言っていたが、何代目なんだろうか。跡を継ぐときに改名したとか言ってたような気がするので、裁判所が改名を認めるレベルだったか。
wikipedia:襲名を見ると「企業社会における例として、ミツカンの例がある。社長は「中埜又左衛門」を名乗ることになっており、社長に就任すると改名することが伝統となっており、戸籍上の名前まで変更している。現在でも社長は「中埜又左衛門」である。]」なんて話もあるのか。
●話は逸れるが、最近は漢字名と読み名の乖離が著しく、日常の細々としたレベルで細々と面倒くさくなること(なっていること)必至なので、表記は「碇シンジ」式にしろと思う。いっそのこと、オールカタカナ(ひらがな)でもいいか? でも、エヴァっぽい方がかっこいいのでそっちで。
●調べてみると、伊集院光の三遊亭楽大もつぎの人がいるらしい。
●歌舞伎や落語に造詣の深い人ならば、何代目の話をしているか暗黙の了解だろうし、そもそも何代目を明示するのが当たり前かもしれない。
●日本の話ばかりでない。大プリニウスと小プリニウス、大デュマと小デュマ、大ヘンリーと小ヘンリー。
●大ヘンリーと小ヘンリーは中川いさみのネタから。
●江戸時代の歌舞伎、あたりのこと。映像記録などなにもなかったころ、同じ名前をした芸能人が存在して(しつづけている)ということ。現代感覚とのある個人(というのも後の言葉になるのか?)についての感覚、よりしろ的? 象徴的な? あるいは、時間的意識の違いみたいなこと、あったのかなかったのか。
●でも、江戸っ子も「先代に比べてあいつぁてんでダメだね」とか言ってそう。というか、今とたいしてかわらんか。wikipedia:名跡とか読むと代数なんかについて「そもそも代数を重視せず、フィーリングでなんとなく決める場合があること」なんて書いてある。
●ちなみに、天皇の代数もけっこうころころ変わってきたくらいだしな、この国は。
●たとえば50年、100年、200年、もっと経って、どっかの学者かなんかが「20世紀後半〜21世紀初頭の日本落語の庶民間における認知と許容」について調べていて、その頃にも電脳空間に置かれている近ごろ書かれただれかの個人ブログ読んで「円楽」を取り違う事例なんか起こったりしないだろうか。……って、実はこれが冒頭の「この話題をワイドショーで見て思い浮かんだこと」だったんだっけ。
●まあ、学者だったら公式団体や新聞のアルヒーフとかにあたるだろう。
●なんらかの理由でインターネットの大部分が断絶したら? 紙媒体も多くが失われたら?
●「……この当時見られる三遊亭楽太郎という名前は突如として歴史から消え去る。これはオペラ歌手という異例の経歴を持つ三遊亭楽大(=「落第」とのダブルミーニングであり、その出身に対する否定的な意図があったと考えるのが妥当である)による、落語会の因習と腹黒いいじめを誇大して表現するために捏造された架空の人物ではなかったか。ちなみに、楽大は後に伊集院光と改名し、さらにはマツコ・デラックスの名で人気を博すことになる。」
●……とかなるかもしれない。これに対して嘉門達夫の音源を見つけてきて「円楽師匠と弟子の楽太郎」というフレーズがある、と反論するやつがいるかもしれない。
●50年、100年、200年、もっと経たあとのやつを騙すために、個人ブロガーというのが適当にウソを織り交ぜるのもいいかもしれない。当たり障りのない。たとえば、浅草キッドが作りだしたという大木凡人芸能界最強説に乗っかってみるとか。
●と、思ったら、この世で一番信用できるWikipedia先生に(wikipedia:大木凡人)サラッと入ってて、「あれ、本当なの?」ということであって、もはや虚々実々といえる。悪くない。

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