※この話はフィクションです。あと、エロ画像出て来ません。
おれが格安中古エロDVD棚をさーっと眺めてたら、なんか『少女と人形』みてえなタイトルの、なんかインディーズっぽいやつあって、「ドールものやろか？ けど、そんだったら『少女の人形』やろか？ ダッチワイフの男版みたいなのと絡むのか？」みてえに思って手にとってみたら、女児が着せえして遊ぶそういう人形を股にぶっさしてるやつで、「うお、マジキチ！ そういう意味か！」と、同時に「こういうのインターネットで見たことあるわー」って思ってたら、静かにFMヨコハマだけが流れる店内に、おっさんの声が鳴り響いたの。
「ここ借りるとこ？ レンタル？ それとも、売ってるとこ！？」
したら、店主が、
「ここは『売り』です」
って答えたんだよ。
ここん店主、いっつもSODのふるぼけたジャンパー着てんだけど、髪は白髪で短く切りそろえて、どことなくインテリ風っつーか、むしろ荒畑寒村の自伝とか揃ってる古書店の店主みてえで、なんか上品なとこあってさ。それで、おれがいっつも安い中古DVDかゾッキのエロ本しか買わないからか、適当に端数丸めてくれたり、けっこう無言で値引きしてくれたりしてね。でも、なんかこう、むこうもなにもいわねーし、無言でレジに数字出るだけだから、一瞬、思ってたのと違うけど、みたいな間とかとってね、あ、ども、って感じでさ。そんなんでまあ、たまには新品とか買わなきゃとか思うけど、まあなかなかね。まあなんか、そんなんよ。
で、入ってきたおっさん、
「そっかー、じゃあ買うか、でも高けーなー！」
とか言ったら、
「入り口の方に200円の棚がありますよ」
って店主。
そうなんよ、入り口に近い方に安いのがあんだぜ。って、おれの方くんのかよ？ おれが片手に持ってるの見て、「そういうのが好きなんか、あんちゃん！」って言われたらどう答えんだよみたいに思ったんだけど、おっさんべつのものに興味いったみたいでさ。
「おう、これ、ちんぼのかわりになるやつ！ いや、60になったら立たねえんだよ！ これこう、かわりに入る！ いや、もう60になったらだめでよ、尺八させてもだめなんだよ。やっぱよお、30、40と使ってこねえと、からっきしだわ、ガハハ！ よし、これ買うわ！」
えー！ エロビデオ求めてきたんじゃねーの、おっさん？ なんか大人のおもちゃ買ってるみたいで、変な方いったなーと思ったわけ。したらさ。
「こっち500円？ じゃあこれも買うわ！」
えー！べつに一個で充分じゃねえのか？ マスター、「一個で十分ですよ」って言わねえの？
「おう、そんじゃあよ、こっから個室ビデオ屋いくからよ！ 知ってるか？ 一人でビデオ見れんだよ？ ここら二件くらいあっからよ！ やっぱりなんか買ってくか！？」
えー！ おれ個室ビデオ屋行ったことねえからしらねえけど、いや、持ち込みもぜんぜんオーケーだろうけど、べつに買わなくてもいーんじゃねーの？ つーかそれより、ちんぼ立たねえんじゃなかったのかよ！ じじい、ちょっととっ散らかりすぎてんぞ！
……って、なんかこのおっさん、60にしてなんか春が来たんだな。相手がどんなんだかわかんねーけど、まあなんかエロいことする間柄までなったんだな。でも立たねえから、そんでエロDVDとかで鼓舞しようみたいな気になったんかな。で、エロの匂いを嗅ぎつけてこの店入って、たまたま目に入った大人のおもちゃでカバーしようと。でも、個室ビデオって、あんた立たねーんだろうが？ なんで2本いるんだよ？ まさか1本自分用かよ？ おい、なんかとっちらかってんぞ、もっと整理しよう、落ち着こうぜ、落ち着きべきだおっさん……ってまあ『少女と人形』みてえなタイトルのDVD片手におれは冷静に考えたりしたんだけど。で、けっきょくおっさん、DVDは買わないで出てった。嵐が通り過ぎたみたいだったし、おれすげえおもしれーって思って、今日はいったん通り過ぎたけど、なんか気になって店に入ったかいがあったなとかさー。
そんでもって、また会計で数百円値引きしてくれて、悪いねまたね、みてえな感じで、まあしかし、どの客相手にもやってんのかもしれねえけど、こういう場じゃ、レジに並ぶ、みたいなのもできるだけ避ける大人のマナーみてえのがあるからわかんねえや。そんでいつもみたいに「大丈夫？」に対して「大丈夫っす」ってだけ答えて（「このエロいの入れるの紙袋だけで大丈夫？ 手提げの黒いビニール袋いる？」に「バッグに入れるから大丈夫です」って意味です）店で出てさ。
それで、外でてみたらアホみたいに太陽が照ってて、車道とか神輿走ってて、春も夏もいつ来るのかわかんねーもんだなって思ったんだ。って、そんな話だよ。それじゃあ。
※『少女と人形』みたいなやつを買ったのかどうかについては、メールにてお問い合わせください。応募は締め切りました。
