5%の世界

 クライアントから「ひと回り大きくして」とか指示があって、「ひと回りってどんくらいだよ? 地球一周かよ?」みたいに思って、とりあえず10%とか文字なりオブジェクトなりを拡大してみて、やっぱりでかくて変だよってなって、5%拡大にしてみて、やっぱりそれでもなんかでけえなって思ったりするの。バランス悪いってさ。
 ところで、A3ノビとか特A3とかいう用紙サイズがあって、A3の印刷物のトンボまで印刷できますよ、裁ち落としまで印刷できますよ、みたいなもんで、一般ビジネス文書とはあんまり関係ないかもしれない。
 で、けっこう前の話だけど、会社のプリンターを新しくしようってときに、A3ノビ対応にするかどうかって話になって、やっぱり対応してるほうがいくらか高くて、おれは「最近校正とかPDFになる機会も増えてるし、ノビいらねーんじゃないっすか?」って主張して、まあ結局対応してないのになったわけ。
 でもって、それでも校正紙としてブツが必要な場合どうしようっていうと、どちらかというとトンボを入れて95%の出力することが多くなったわけ。欄外にそう書いて、先方にもそう伝えて。それで、ちょっと入稿前とかになって、端っこは印刷されないけど100%で出してみるかってやってみるわけ。そんで、出してみるとあんがい印象が違わないっていうか、全体が5%縮小されっと、冒頭に書いたみたいな違いは感じないの。あ、そりゃもう、きちんとデザインの学のある人やセンスのある人にはわかるだろうが、おれとか成り行きの野良だからって前提なんだけど。
 すっと、まあなんというのか、縮小していく社会とか経済とか考えると、おれの5%だの、おれの家族の5%だのとなるとでかいけど、まわりもみんな縮んでってるとしたら、あんまり気づかないかもなーとか思ったの。でも、現実としては、あるやつは10%減かもしれないし、あるやつは逆に20%増かもしれねえじゃん。それでも、なんかわかんねーけど、少なくともこの日本社会というのは絶望の先行きしか存在してないし、気づいたらA3がA4になったりしてるかもしんなくて、それでもなんとか印刷領域に残っていたいっておしくらまんじゅうの殺し合いしてるわけで、そんとき落ちていくのは弱いやつで、強いやつはますます相対的に大きくなるし、場合によっては絶対的に大きくなるのかもしれない。
 それで、天からもういちどA3ノビ対応プリンタが降ってきてくれたらいいなとか思うけど、そんな高さから落としたら壊れる。