『PSYCHO-PASS サイコパス』面白いんだけど、第5話見てて2つくらい気になったことがある。ひとつは、爆弾テロをしかねない相手の家に踏み込むのに、警戒心が足りないんじゃないかということ。一回目、宜野座さんが怪我した際は……まあ、なにかしら警察の機械の方のスキャン機能を犯人の仕掛けの方が上回っていたみたいな、士郎正宗なら欄外になにかしら書き込むやりとりがあった上で、でいいだろう。で、今、公式サイト見たら(あんまり公式サイトとか見ないのは……なんでだろ? いろいろおまけ要素とかあったりすんのに、すばらしい『ストライクウィッチーズ』とかですら見なかった)、ギブスンよりディック強めで、みたいなこと書いてあったから、まあその描写ないのはいいし、描写ばかりでなく、あそこまで社会の技術が進歩していてもそこまでじゃないよ、みたいなところがあるのかもしれないし。
でも、二回目の、常守ちゃんがホテルに踏み込む方は単なる不用心じゃねえの。一回待ち伏せ爆弾使われてるんだぜ。いや、これは‘警察もの’としてよ、ほら、東アジア反日武装戦線検挙のときだって、自爆をおそれて部屋に踏み込まないで、出勤したところを逮捕って方針でやったじゃん。そのために、警戒されないように、事前にNHKと新聞の報道を押さえたりしてんじゃん。
……けど、両方のそれにしたって、「あえて」の可能性はあるか。ようするに、この作品世界はそういう社会で、シビュラシステムとやらが「君たち人間の考えることはよくわからないよ」って、メリットとデメリット計算から捜査官の人命軽視に見えるような捜査するようにさせてんのかも、とかね。
で、人命なんだけど、重要な容疑者をブクブクバシャーンってぶっ殺しちゃったじゃん。あれがもっとわかんね。だって、べつに単独犯だって決まったわけじゃねえし(……だよな、たしか。いや、あの悪役のボスみたいのが、完全にどう調べても繋がらないように工作してんたりとかあるかもしれねえが)、あの場ですごい武器を構えてたわけでもねえじゃん(……だよな、たしか)。痛み止めドラッグでパラライザーが効かないとしても、両足だけバシャーンすりゃいいじゃん。そんで、そっかゆっくり電脳……はない世界か。それでもなんかすごくいい感じの自白剤くらいあるだろうし、べつになにもせんと勝手にぺらぺら喋るかもしれねえし、殺す必要ねえじゃん。謎残っちゃうじゃん。
……けど、これも「あえて」の可能性はあるか。ようするに、この作品世界はそういう社会で、シビュラシステムとやらが「君たち人間の考えることはよくわからないよ」って、メリットとデメリットからいちいち横の繋がりなんか辿ろうとするな。四季協会がなんだ、そんなのは細胞一個一個潰してっても変わらねえよ……とか。
あるいは口封じ、とかね。というわけで、ディック的という以上はやはり社会全体、いや、世界全体に警戒心を持たねばならんのだし、これ全体が現実とは限らない。ひょっとしたら常守ちゃんの監視官としての最終試験でしたって落ちかもしれないし、あるいはフラクタルシステムの鍵となる秘儀かもしれない……!
いや、まあそんなありきたりなところにクライマックスを持ってくる必要はないかもしれないし。要するにあの悪役の人じゃなくてシステムが敵なんだ! じゃなくてもいいし、「巨大にして能動的な生ける情報システム」たる偽りの神のもとで地を這う虫をやっていくしかないんだ、って終わるかもしらん。まったく別のでもなんでもいい。それが面白ければ。が、ドミネーターが今後も似たようにブクブクバシャーンしていったとして、その理由がなんかはっきりしねえとすっきりしねえかなって、そんな風には思うよ、今のところ。
で、このラインが今んところのおれの基準線つーのか、なんというのかそういうもので、人によっては無駄に細かくてどうでもいい目盛りだろうし、もっとすごくでかいところ(良い点、もしくは問題点)もわかってねえで、って思うやつもいるだろうし、そんなんまあしょうがねえだろなって。
わが歴史あるローマ共和国は、この国を滅ぼそうとする敵に対して、どのように自衛しているのか? ほかの人間とおなじく、われわれローマ人も不死ではないが、われわれ自身よりはるかに優れた生き物の力を借りている。未知の世界で生まれたこの賢く親切な生き物たちは、もし共和国が危機に瀕した場合に手をかすべく、用意をととのえている。危機が去れば、彼らは姿を消す――そして、必要とあれば、またもどってくる。
フィリップ・K・ディック「シビュラの目」
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