おれの行動範囲というのはおそろしく狭く固定化される傾向にあって、野毛の図書館通いがはじまったところで、桜木町駅との往復がほとんどだ。せいぜいKIKUYAの並びの左翼っぽい書店に入ってみて、品揃えよくないなと思うくらいだ(あの本屋はずっとあったろうか?)。
だが、ある日突然、この坂を登っていった向こうは横浜だよな? などと思い、とぼとぼ歩き始めるということもある。
まあ、まったく知らない道なわけでもなく、自転車で通りがかった覚えはあったりするのだけれども。
歩いて行く分には、桜木町→横浜駅はみなとみらい寄りの、自転車窃盗の名所という話もあるなんとかロードやなんとか科学の豪奢な建物ある道よりずっといいと言える。
いい街というのにはいい路地がある。車が入れるか入れないかの路地に、住人たちが調和の取れていない植木鉢をてんでばらばらに出している度合いによって、そのよさは決まる。このあたりはいい。
関内を中心に考えて、本牧、山手の方ではなくこちら側に引っ越すという手もあったかもしれない。が、やはりただ少し静けさが足りない。
横浜の方はニギニギしているからな。
おれが「横浜」と呼ぶのは西口五番街あたりであって、そこからJRに乗ると、出口が一つしかないすばらしい山手駅では工事のためにホーム幅が狭くなっているホームを一つの出口に向かってたくさん歩くはめになる。まあいい。おれはよく歩くのもあまり苦にしない。キャベツをよく食べて健康だからだ。